株式会社シニアジョブ【『世界に誇れる高齢者大国』の実現】

 昨年12月14日に、【シニア専門求人メディア「シニアジョブ」掲載求人が1万件突破】と題するプレスリリースに接した。シニアジョブが展開する「シニアジョブ」に掲載される求人が、12月12日時点で10000万件を超えた。ちなみに「正社員求人46・7%」「平均年収375万円で若手との差が少ない」「戦力としての期待大」というものだった。

 「そこまで成長しているのか」が、実感だった。シニアジョブは現代表取締役:中島康恵氏により2014年に興こされたIT企業が、シニアジョブ(16年に事業および社名変更)のキッカケとなった。

 私が某週刊紙の「日本のユニコーン企業を探せ」という企画で、中島氏に取材の機会を得たのは2021年の頃だった。爾来約3年。プレスリリースに「ユニコーン企業の有力候補だったことは間違いなかった」と「我が意を得たり」を覚えつつ、再取材を思い立った。先立って広報担当者から「当時の事業以外にも、その領域は拡がっている。人材紹介と人材派遣の登録人材は延べ8万9000人以上、登録企業が9万3000社以上、求人サイトの登録人材が1万3000人以上、登録企業が3100社以上に・・」・と「今」のレクチャーを受け、再取材に臨んだ。

サッカー青年が、現業に足を踏み入れた背景

 中島氏はサッカー少年・青年だった。それも中途半端ではない。J1のユースチームで活躍するほどだった。「今ではサッカーとは殆ど無縁です」としたが、そんなキャリアの若者がシニアジョブという世界に足を踏み込んだ契機は何だったのか。中島氏はこんな風に噛み砕いた。

「ある意味で私には、運があったと思います。現業に転じる前に立ち上げたのがIT企業。そのものの歩みもさることながら、IT人材を紹介して欲しいという声をたくさんいただきまして・・・。シニアでいい、いやシニアがいい、という具合でした。シニア人材へのニーズを実感しました」

「私の実家は、土木屋です。父は60歳を過ぎてなお現場監督でした。ある時、年齢が理由で働けない人が多く存在している現実を知りました。年をとっているから働けないということに、疑問を感じました。その多くの方々が、父と同じ年齢層だったからです。同じ様な疑問を抱いていた仲間を集いました。『働きたいときに働ける社会を創ろう』と決意したのです。」 

「ご承知の通り日本は世界一の高齢者大国であり、少子高齢化が進んでいる最たる国です。対する我が国の施策を、世界各国が注目しています。高齢者が活き活きと生活できる環境を作り、高齢者総活躍社会を実現させます。その牽引役を果たすつもりです、そして『世界に誇れる高齢者大国』の実現を目指します」

現実の直視。先達ならではの深謀&事業展開

代表取締役社長 中島康恵 氏

  厚労省や総務省等の調査結果を見ても、「働く高齢者層」の割合が増加傾向にあることが読み取れる。中島氏は事業展開を通じて、それを肌身で実感している。「シニア層の働くことへの活発化は、当社事業の求職者数が(昨年まで)19年連続して増加していることに象徴的です。日本の場合の“活発化”は先進国にあっても屈指です」と指摘する。

 日本の65歳以上の高齢者層の就業者の多さ(2023年で914万人と20年連続過去最高)。就業率25・2%(過去10年で5P超の高まり、OECD(経済協力開発機構)の平均15・5%を大きく上回る。などなどは「人生100年時代と生活資金」「健康寿命の伸び」、といった括りで語られがち。

 中島氏もそれを否定はしない。が、こうも踏み込んでいる。「日本人の勤勉性、働くことへの意欲がベースになっている。働く機会がなくなった時の虚無感への不安が、高齢者層をして仕事を求めさせていると認識しています」。

 現在シニアジョブでは、以下の3事業を展開している。

シニアジョブ』―高齢者層、という漠然とした求職・求人という枠組みではない。「50代」「60代」「70代以上」の歓迎求人、という区分けを前面に押し出している。年齢による不採用を抑えるためだ。「年齢不問」という求人ほど、曖昧なものはない。求人(企業)側に対しても、「初期費用不要」「求人掲載時も採用決定まで費用は0円」という求人サイトだ。

シニアジョブエージェント』―人材紹介と人材派遣。50歳以上60歳代が主力。特徴はなんと言っても、「専門キャリアアドバイザー」の存在。面接がスムーズに行える様に当該企業の特徴の説明にはじまり、入社時の条件交渉など最後までサポートする。建設コンサルタント・自動車整備士など専門職への転職では中島氏の言葉を借りれば、「業界の課題や問題を語り合えるレベルにまで育て上げるサポートをしている」となる。ちなみに5月19日時点で2万8784人の転職希望者が、登録されている。なおシニアジョブエージェントには業種歴20年以上のベテラン組や国家資格取得者が多く、採用企業の底力となりうるという評価が高い。

シニアタイムズ』―いわば、アフターフォロー体制の充実。税理士・社会保険労務士・就活アドバイザー・宅建取引主任などにより、より実りある生活の質を上質にするためのWebメディアである。

前回取材した際に、「第1号のマッチング案件までに200社余の求人企業を開拓しつつ、巣鴨や三軒茶屋などアクティブシルバーが集うエリアでの直接スカウトや応募用の履歴書作成を手助けした」と中島氏から聞いた。懐かしくもあり、昔日の感を思い知らされた。