カメラ好きが高じてビジネスへ!GOOPASS創業者・高坂 勲のキャリアパス

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GOOPASS(株)は2017年4月、現社長の高坂勲氏により設立された。カメラ機材のサブスクリプション型レンタルサービスを展開している。具体的には2500種類以上の、カメラ・レンズ・ドローンなどの撮影機材がその対象。

 この限りでは果たして読者諸氏が「なるほど、素敵なビジネスだな」と、膝をポンと叩くかどうかは判断できない。が、おいおい頷いてもらえると確信するのでしばしご容赦。

 ちょっぴり、「へえ~」と感じてもらえそうな事例を記しておく。ビックカメラは私も時折足を運ぶ。「酒も扱っている」といったビジネスに対する発想が好きだからだ。が高坂氏から聞かされるまで、「カメラやレンズのレンタルをやっている」とは全く知らなかった。詳細は後述するが、一連の商品の提供元はGOOPASS。

 高坂氏は己に素直な起業家。彼の口から取材中に現業に関し、こんな説明がサラリと飛び出した。

「小学校の特別授業という形で、私たちのデジカメを子供たち全員に配り、写真家の方を先生として来ていただく取り組みを始めています。算数とかって、正解不正解で授業をやるじゃないですか。写真は全員が褒め合う授業になって、自己肯定感が上がる。結果として写真を好きになってくれたら、地元愛を育むきっかけになるのではないかと考えているんです。自らの体験から・・・」。高坂氏の起業のエキスは、この発言に収斂されている。

山中湖から紅富士が撮りたい・・・ビックカメラとの出会い

 高坂氏はそもそも、多趣味。カメラはその最たるもの。やはり好きな「楽器の演奏」や、「スポーツに興じる」際などにはカメラは常に手にしていた。撮った。幼い頃から単純に、「趣味を持つって楽しい」と実感していた。歳を重ねるに連れそれは「趣味を持つ人生って素晴らしい。その都度カメラに収めておくと、素晴らしさを残し続けることができる」と、膨らんでいった。起業の原点だ。

 個人事業主のご両親の手で育てられた。自由な働き方を身近に見て育った。そして時の経過とともに、「自由な働き方に憧れるのと並行しいつしか、その為には確かな収入源が確保できなくては・・・と思うようになっていた」。

 学校を卒業後、光通信に籍を置いたのも「起業家輩出企業」として知られていたからだった。が配属先は営業職。半年で順調に昇格し部下10人を率いる経験を積めたので早々に退職。創業期メンバーとして、WEB関連事業を展開しようとしていたGENOVAに身を投じた。業を興すという立ち位置があったからだ。「新規事業の立ち上げから上場の準備、財務経理まで事業の運営に必要不可欠なことを身につけさせてもらった。あっという間に12年が経っていました」。

 その間もカメラ好きは、日増しに高じていった。山中湖。カメラ(写真)マニアには垂涎のスポットだとか。南アルプス連峰、富士山、山中湖が目の前に広がる。高坂氏がのめりこんだのが、日の出前の星空と日の出時の富士山。ほぼ変わらない、我が身を置く休日の所定地だった。山中湖近くに宿をとり夕方は陽が沈む際に、早朝は陽が昇るタイミングに寄り添い富士山にカメラを向け構えた。「とりわけ早朝に陽が昇る時の、紅富士は“得も言われぬ”絶景でした。緊張で汗ばむ手でシャッターを押したものです」。

 そんな具合に休日に蓄えたエネルギーを、社内で定期的に行われるビジネスコンテストで爆発させた。好成績を収め続けた。高坂氏は「もしかしたら僕の提案するビジネスのアイデアは、社外でも通用するのではないか・・・と考えるようになっていったのです」と振り返った。挑戦した。それもこれも無類のカメラ(写真)好きならではの、提案だった。

 前記のビックカメラでの一件である。『ビックカメラアクセラレーター2017』の存在を知った。独特のビジネス展開を執るビックカメラの経営を支えている施策である。高坂氏は言う。

「実践を介し体験していたWEBディレクターのスタンスから、独立して取り組みたい事業企画で臨みたい、と考えました。長らくの友であるカメラを活かして、新たなBtoCサービスのアイデアをまでは、と意外にすんなり案はまとまりました」。

 が時まさに、スマートフォンの急速な拡幅期。スマートフォン対カメラ。高坂氏は今でも「スマートフォンを否定するものではない」と言う。しかしこうも断じる。「スマートフォンで写真を撮るのと、カメラで撮るというのは、僕の中で明らかな違いがあります。カメラではシャッターを押すことで、のちのちまでの思い出が生まれる。その思い出は心を支え、新たな足跡に繋がり生み出す。そう確信していますので・・・」。そんなキャリアから身体に沁みついた確信が、「カメラのサブスク型レンタル」に結びついていったのだった。

 ビックカメラを動かしたのは、カメラをサブスク型レンタルに落とし込んだ点ではなかったろうか。それなくしては、ビックカメラも「新たなビジネス」と捉え得心しなかったはずだ。

 これを機に、GOOPASSの前身:カメラブは設立された。

今後の展望

 現在GOOPASSには、多くの製品の登録が成されている。それぞれに、レンタルカメラなどが用意されている。素朴な疑問が湧いた。カメラやレンズをレンタルで2500種類以上を取り扱っている。「今後も増やしていく」としている。在庫負担が重いのではないか・・・。高坂氏は「強みと認識していますが、リース会社と提携しています。在庫はリース会社が保有し、当社がそれを運用受託する枠組みです」と、言ってのけた。それだけ需要の高いビジネスということなのだろうが、こんな話も聞いた。ある観光業を営む業者は、GOOPASSと提携した。「顧客にカメラのレンタル」という付加価値を提供するためだ。

そういう顧客が増えていく中で(実績を積み重ねる中で)、「リース会社との提携も進んだ」という。そしてリース会社との提携というビジネスが高く評価され、ソニーやヤマハそしてビックカメラなどの大企業が株主として参加してきた。無論、いわゆるベンチャーキャピタルも積極的に食指を伸ばしてきた。今年1月末時点で「累計43億円超の資金調達」を実現している点に、その人気ぶりは象徴的といえよう。

 高坂氏は今後について「レンタルした中古品が購入できる」「一定期間の利用後に無料で提供するサービス」などの展望を指折り数えながら、「将来的にはサブスク型レンタルの商品を、楽器やアウトドア用品など様々な趣味の分野の製品まで広げていきたい。趣味の越境です」とした。

 思う。高坂氏の頭の中には「趣味は人生のインフラ」なる言葉が飛びかっているに違いない、と。