他県民も注目!新規就農のハードルを下げる“秋田型農業インターンシップ”

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全国有数の米どころ秋田県は、銘柄米「あきたこまち」のほか、新品種「サキホコレ」もデビューし好評を博しています。その他、野菜や果樹、花き、畜産など、幅広い農産物の生産が行われている農業県・秋田で今注目を集めているのが「秋田型農業インターンシップ」です。
農作業体験を中心に、独立就農や雇用就農を見据えたテーマ別のプログラムを、参加者の希望に応じて作れるのがこのインターンシップの特長。就農希望者にとっては実践的な学びの場であり、受け入れ先の農家にとっては新たな人材との出会いの場となる、双方にメリットのある取り組みについて、秋田県農業公社の髙橋さんにお話を伺いました。

好みの地域や品目を選べるインターンシップ

―秋田型農業インターンシップとはどのような制度なのでしょうか?

農作業体験を軸として、独立就農や雇用就農、あるいは移住就農に向けて先輩就農者との対話や農業法人などからの経営の説明といったテーマ別のプログラムを、ご自身の希望に応じてカスタマイズできるセミオーダーのインターンシップ制度です。期間は2日~5日間の間で、就農したい地域や作りたい品目に合わせて県内の農家・農業法人から受け入れ先を選ぶことができ、その際にかかる滞在経費は農業公社で助成します。
もちろん、具体的なイメージがそこまで固まっていなくても、行きたい時期などご希望をお聞きした上で私たち農業公社から受け入れ先をご提案することも可能です。

農作業体験の内容は、受け入れ先や作物の生育状況によって多少異なりますが、苗の植え付けや収穫、出荷調製などが一般的です。ただ、単なる作業の体験ではなく、なるべく経営視点での作業のポイントを学んでもらえるよう意識しています。
テーマ別のプログラムについても、「農業経営のリアルな話が聞けて、就農に対するイメージがクリアになった」と好評です。

農作業だけでなく販売や地域事情も学べる

―いつ頃から始まった事業なのですか?

本事業は令和元年度から始まり、令和6年度にこれまでやってきたものをベースにバージョンアップしました。
先ほど「セミオーダーのインターンシップ」と申し上げましたが、ご自身の希望や興味に合わせて研修プログラムを決められるようにした点が、バージョンアップの内容です。
というのも、インターンシップの柱は農業体験(農作業)ではあるのですが、農作業以外の農業に関わる活動、例えば栽培した野菜の売り方とか、地域の農家さんを紹介・案内してくれるとか、そういったこともインターンシップの中で実施するかどうかは受け入れ先の農家さんによってバラバラな状態でした。
そこで、「経営者から農業経営の話を聞きたい」とか、「販売の方法を知りたい」とか、複数のメニューの中から参加者の希望に合わせて選択できる設計にしたんです。

以前にも、2泊3日で農業体験ツアーを事業としてやってはいたのですが、2泊3日だとどうしても、行く先々の農家さんでちょっと作業するだけになってしまい、自分が農業に適性があるのかどうかまで分かる感じではなかったんですよね。
例えば一日ずっと同じ作業をすることも農業ではよくありますが、そういった根気がいる作業も大丈夫かとか、ご自身と農業との適性や相性が分かるような体験、もっと言えば実際に就農した場合の農業経営についてよりクリアにイメージできるような体験をインターンシップの中でしてもらえると良いと考え、今のような形になりました。

農業県・秋田を幅広い年代が体験

―秋田県の農業というと、私のイメージは大潟村のお米だったのですが、お米の他にはどのような品目の栽培が盛んですか?

大規模園芸拠点の整備などにより、最近では、えだまめやねぎ、しいたけ、キク類等の生産が拡大しています。そのほか、園芸作物ではアスパラガスやすいか、にんにくなど、果樹ではりんごや日本なし、さくらんぼの産地があります。

インターンシップ参加者は、県外から参加される方も多いです。割合で言うと県内・県外半々くらいで、県外では富山県や岐阜県など、遠方からの参加者も増えてきています。
インターンシップ後の選択肢も結構いろいろあって、すぐに就農に結びつかなくても、まずは移住してみようとか、農業研修に行ってみようとか、毎年参加者の3割程度がインターンシップをきっかけに次のアクションに結びついていますね。
秋田県には農業大学校の代わりに「秋田県農業研修センター」という施設があり、そこで2年間の研修を実施しています。その他、市町村や各地の農協で独自に研修施設を持っているケースもあるので、インターンシップ終了後もご自身の希望に応じて農業研修を始められると思います。

インターンシップ参加者の年齢層も幅広いのでしょうか?

そうですね、10代から50代までと幅広いです。県内には農業専攻の大学もあり、そこからインターンシップに参加して農業法人に就職するという学生さんも多いです。

秋田県の事業として本インターンシップ制度が始まった経緯の一つとして、「雇用就農」を増やす目的もあったんです。というのも、まったく基盤がない中で新規就農するハードルってとても高いので、まずは農業法人で経験を積み、農業の働き方を知った上で独立就農する、という選択肢があると良いのではと考えたからです。
実際、受け入れ先になってくださっている農家さんは、その点すごく理解が深いですね。農業者になりたい方にとっても、それを受け入れる農業経営者の方にとっても、双方メリットのある事業だと思います。

―お話を伺っていると、農業の担い手を増やす上ですごく良い政策のように思います。今後の展望はありますか?

このインターンシップ制度は私たちとしても良い事業だと思っているので、少しでも多くの方に認知してもらうためのPRには今後も力を入れつつ、参加希望者に対しては就農相談の段階で、その方がどのような希望をお持ちかを見極め、なるべくご希望に合ったところを体験場所としてしっかり提案できるよう努めたいですね。
満足のいくインターンシップを経験できることで次のアクションに繋がると思うので、その点は大切にしていきたいと思っています。