静岡県伊豆の国市の大仁研究農場。農場面積100ヘクタールを誇る広大な土地の中に、「自然農法大学校」はあります。農薬や化学肥料を用いない自然農法を学べる教育機関として、ここには全国から学生が集まります。
自然農法に興味を持つきっかけは、人それぞれ。都会出身の人もいれば、実家が農家の人もいます。また、新規就農を目指す人もいれば、家庭菜園を楽しむ人もいます。多くの学生は生活を共にしながら、様々な作物を育てて食べ、体全体を使って自然農法を学んでいます。
今回はここで働く田中さんに、全国的にも珍しいカリキュラムを持つ学校の学生生活や、自然農法の魅力について伺いました。

土づくりが基本の自然農法
――まず最初に、自然農法大学校の沿革について教えてください。
自然農法大学校は平成2年に開学して、今年で35周年を迎えます。自然農法を切り開いた岡田茂吉の思想を原点に、社会情勢に合わせながら環境を整えてきました。
そもそも、自然農法は一部の人しか知らない、結構ニッチな農法だと思います。自然農法を提唱した一人に、岡田茂吉という人がいますが、岡田は、農薬や化学肥料は土や環境に良くない、人の健康に良くないという考えのもと、昭和10年から自然農法を研究し始めました。その中で、自然農法を実践する人材を育てたい、世界に通用する人材を育てたいという願いを持っていたんですね。
私たちは、まず自然農法の団体としてNPO法人から始めて、そこから公益財団法人を作っていきました。最初は、昭和57年に、静岡県の旧大仁町(現伊豆の国市)に、大仁農場を作りました。それから10年ほど時間はかかりましたが、大学校を作る土台ができました。
――福岡正信さんの自然農法、川口由一さんの自然農、木村秋則さんの自然栽培など、他の手法と比べて、岡田茂吉さんの自然農法にはどういう特徴があるんですか。
他の農法と比べると、比較的、慣行農法の考え方に近いのが自然農法です。自然農法では、土作りが大事と考えます。一般的な農薬や化学肥料を使わず、ちゃんと土作りをしていくんですが、完全無肥料とか、耕起や除草をしないとか、極端なやり方はしません。代わりに、作物のポテンシャルを生かす手段として、植物性や動物性の堆肥などを利用します。

いろいろな手法を大きくとらえる
――自然農法は不耕起のような手段を目的とするのではなく、あくまでも農家さんがちゃんと生産できて、生活できることを目指しているということでしょうか。
そうですね。昭和62年から大仁農場では、自然農法の基準となるガイドラインを作り始めました。活動しているうちに、農林水産省の方が「ガイドラインを見せてほしい」と見学に来られ、学ばれた後にできたのが、有機JASです。あの時代に、自然農法や有機農業をやっている団体としては先進的だったので、それを元に有機JASの制度を作られたようです。ルールはもう全く一緒ですね。
昭和62年までは、ガイドラインがなく、人によって岡田茂吉の手法に対する解釈がバラバラでした。岡田が亡くなってからガイドラインができる昭和62年までの間に、地方や人、農家によってとか、岡田の弟子や普及指導員によっても、手法が全然違っていたらしくて。「岡田は無肥料栽培って言ったんだから無肥料だろう」とか、「自然農法なんだからビニールも使うな」とか。それがちゃんとガイドラインを作ることによって整い、農家も取り組みやすくなりました。
ただ、昭和62年にできたガイドラインも、時代の流れとともに変える必要が出てきました。平成に入ってからは、もうちょっと基準を分けたいということで、4分類に分かれました。これらは「MOA自然農法」(Mokichi Okada Associationの略)と、「特別栽培」(化学肥料を50%以上減らして栽培)と、「移行栽培」(自然農法に移行して間もない、初心者マークの段階)と、「自然農法プラチナマーク」(植物性資材のみを使用)に分かれています。それによって、自然農法の中でも、動物性とか魚介系の資材を使う分類と、さらにこだわって草とか落ち葉など植物性しか使わない分類と、または無肥料や不耕起にこだわる分類といったように、分けたんですね。分類は結構幅広いのですが、一般農業的だという点ではまとめることができます。
――そういうことなんですね。「自然」と名の付く農法はなんで色々と分派しているのか、ずっと疑問だったんです。提唱者である岡田茂吉さんが亡くなった後に、口伝のような形で断片的に伝わっていたんですね。
この学校に学びに来られる人たちも、同じです。それぞれの分類の手法だけを使っていた人たちは、「こうじゃないんですか?」って質問してきますね。でも、ここは学校なので、基礎も、幅広い種類も教えるべきだと思います。不耕起もやるし、無施肥もやるし、「菌ちゃん農法」(主に糸状菌を使った農法)もやるし、「炭素循環農法」(植物と菌類の共存共栄関係を利用した農法)もやる。色々やらせたうえで、比較しながら、教えています。ただ、それぞれの農法を否定はしないんです。自然農法は広い分野の中にあって、その中で一番大事なのってやはり土、ってところに落とし込めばよい。その上で経営を重視するのか、もしくは自分のこだわりを重視するのか、自給自足を重視するのか。そこのバランスで、学生がどう取捨選択してやっていくかは任せています。

広い農場を生かした実習
――コースも色々ありますが、それぞれどういう学びがあるんですか。
入学時に1年間の「基礎技術科」か、もしくは2年間通う「営農技術科」か選べます。各学科では15人定員にしていて、大体10名ぐらいの応募があります。とても小さい学校です。
講義と実習の割合は4:6になるようにしていて、実習が多めです。よそではやはり座学が多めになると思いますが、ここは広い農場なので、農場の中で実践的に学んでいくことが大事かなと思っています。
基礎技術科というメインのコースでは、自然農法の基礎を1年間学びます。一般農業学、農業昆虫、植物病理学とか経営学とか、本当に大学や農業高校で学ぶような形式です。本院は農場に研究員、農学博士が何人かいるので、そういった専門家の講義もあります。また、静岡県なので、静岡大学の名誉教授に来ていただいて、専門の講義をいただいたりもします。そうした基礎と、分野について広く学んでいくコースです。

この学校にしかない特徴は、「なぜ自然農法がいいのか」という価値を学べることです。自然農法の良さとか深みを知ることによって、それが社会に対してどんな価値があるのか、どう貢献しているのかを知ります。そういうことに自分自身が誇りを持ったり、志を持ったりするきっかけになるように、いろんな分野の講義を設けています。
また、岡田茂吉の捉え方は医療にも通じています。岡田は、西洋医学が強い現代の中で、東洋医学も含めて、幅広く一人の人間を治すという視点も大事じゃないかと言っていました。東洋と西洋との医療を合わせた「統合医療」という考え方があります。この統合医療を進めるため、大仁農場には「エムオーエー奥熱海クリニック」という医療施設もあります。医師と看護師がいて、医師は学校で講義も担当します。医学的には農業をどう捉えているか、特に食と医療の「農医連携」という部分で、講義をしてもらいます。これらの講義は、農場のコンセプトである「プラチナ資格」を基準として、植物性資材を中心とした座学で、基礎から応用まで学んでいきます。

7月頃になると、実習も行われます。基礎技術科では一人1アール程度の畑を与える、先行栽培をしています。農家としての経験がある人や、プロを目指している人などには、もっと畑を広く与えることもありますが、基本1アールぐらいで、好きな作物を何種類でも育てていいことにしています。そこでプチ農家になったつもりで、計画書を自分で作ります。何を育て、何の資材が必要で、どんな機械を使って、どんなものを収穫して、どういう風に売るとか、どんな値段なのか。全部の工程を7月から冬にかけて学びます。それをレポートにまとめ、卒論のような形で発表会をします。これが、基礎技術科で学ぶことです。
営農技術科は、さらにプロを目指す方向けに設けています。これは基礎技術科として学ぶ1年間プラス1年で、2年間のコースです。基礎技術科のレベルアップ版ですね。経営やビジネス系の座学は2割で、実習が8割です。実習は春から早速行いますので、基礎技術科卒業前からもう計画を立てさせ、1年間は農家になるつもりでやってもらいます。職員も指導に入りますが、なるべく一人でやることを大事にしています。自分で土壌診断や病害診断をできるようになるためのステップとして、営農技術科があります。
また、この自然農法大学校は「農業大学校」として国から認定されているため、農林水産省が給付する「青年就農給付金」の準備型に該当し、給付をもらうことができます。1年ごとに150万円が最長2年間給付されます。

――実習で育てる作物は、色々あると思いますが、どんなものを作るんですか。
お米は基礎技術科ではみんな学びます。営農技術科では、人によって就農の仕方が異なるので、全て野菜を作るのか、お米と半々にするのかなど、選択できるようにしています。営農技術科の選択肢としては、花や果樹栽培も可能です。梅や栗、ブドウ、なし、びわなどが栽培できますね。あと、リクエストは少ないんですが、養鶏も可能です。これも、大仁農場というベースがあるがあるからこそ、幅広い種類の実践ができるんです。
――短期コースや社会人コースはどうですか。
短期コースは、基礎技術科のコースを4か月に分けてそこに入り込むという、シンプルな構成です。内容は基礎技術科と同じ講義と実習ですが、基礎技術科に1年間いられない人向けのコースです。例えば仕事を急に辞めたとか、または、学校全部落ちちゃって浪人になりましたとか、脱サラのタイミングだったとか。そんなに需要は多くはありませんが、毎年、1人か2人受講します。
社会人コースは、隔週土日の授業を4月から12月まで、全18回行います。あとは講義と実習のバランスを考えて、作れるのは野菜だけに限られています。基礎技術科のコンパクト版ですね。土日だけなら通える人向け、仕事をしながら学びたい方のニーズに答えたものです。一泊二日で受講してもいいし、通ってもいいです。これらのコースの値段は、基礎技術科より高いものの、講義は東京~浜松の範囲から通える時間帯で行っており、農場の最寄り駅への送迎も無料でついています。受講者の中には、家庭菜園をやっている人も多くいます。ニーズは本格的な農業よりもこちらの方があって、2025年は8名在籍しました。






新規就農への充実のサポート
――基礎技術科を出られる方は、基本的にほぼ就農されるんですか。
その割合は高いです。ただ、若い人はやっぱり雇用就農、まずは農業法人などで働いて資金と経験値を蓄えてから、というパターンが多いですね。
就農する場所はそれぞれで、北海道から沖縄まで実績があります。また、大仁農場は自然農法大学校の全国の本部事務所も兼ねており、全国にある各支所を通じて、地域との繋がりがあります。なので、卒業生がどんな土地に行ったとしても、このネットワークと繋いで、農家さんや、技術関係の方、農地なども紹介できるシステムが、自然とできているんです。そういったところも売りにしています。
――心強いですね。確かにもともと農家でない方が新規就農するには、まず農地を取得するのが大変だと思います。そういった方はどこで就農する傾向がありますか。
大半は地元に戻ることが多いんですが、首都圏の方だったら、埼玉、千葉、神奈川県ですかね。長野県に行った人もいます。
農地を得るためには、農業委員会にまず尋ねる必要があります。学校ではそこで就農する人向けに、ガイダンスも行っています。静岡県には東部農林事務所っていう部署があるんですけど、そこの課長さんたちに「農業委員会にはこう聞かれるよ」といったことを教えてもらいます。学生たちと向かい合って、就農とは何ぞやとか、どういう計画書を提出すべきだとか、実際にうまくいった就農者はこうだった、ということも詳しく教えてくださり、さらに相談もさせてもらえるんです。
就農する地方によって、やり方とか熱意は異なるものの、どの地方も手続きのしくみ自体は一緒です。なので、「こういう風に計画を立てれば農業委員会はサポートしてくれるよ」といった、現実的なアドバイスをしています。
――それはありがたい。至れり尽くせりの学びがありますね。
多様な学生たち
――学生さんは寮にお住まいなんですか。
大半が寮に住んでいます。というのも、朝の農業の管理を実習で学ぶために、6時とか6時半の実習も入れていますので、寮に住んだ方がいいですね。
元々近所に住んでいる人は通いでもいいんですけど、やはり車だとガソリン代もかかります。それに、寮費はなるべく安くということで、月1万5000円なんです。相当安いですよね。というのも、就農するためには最初の資金づくりが大変なので、寮費に関しては運営団体が結構負担するようにしているんです。食費も安くて、朝250円、お昼500円、夜500円。すべて自然食です。寮に入ってから10キロ痩せた人とか、健康診断が良くなった人もいます。自然に囲まれたところで、環境もいいですよ。
――生活環境も至れり尽くせりなんですね。基礎技術科に来る人の年齢は、30~40代が多いんでしょうか。
その年代が多いですね。例えば、サラリーマンとして営業をされていた方で、「こんな商品を売ってていいのか」と疑問をもって、そこから自然農法に興味持ったとか。または、実家が農家だった方に多いんですけど、「農家が嫌だ」というイメージがあって、そこで親と喧嘩別れして、都会に行って仕事して。でも、結局、都会のマルシェとかで有機野菜を買って食べるとすごくおいしくて、それで結局、田舎に帰って農業をやりたくなったから、この学校に学びに来た、という人もいます。あと、大手の企業で働いていた人が、自然農法の野菜を食べて感動しちゃって、早期退職してでも学びたいっていう人もいます。
他にも、化粧品会社で無添加の化粧品をつくっておられる方が、化粧品会社ではあるけれども事業の1つに農業を入れたいという願いがあったそうです。そこでここの社会人コースを知り、学びに来られたんですが、いよいよその会社で事業としてやっていくことを計画しています。
今、高卒、大卒は少なくなりましたね。というのも、農業の世界はやっぱり初期資金がないと厳しいのと、なりたい職業ランキングからも農業は遠い部分にあります。仕事として新卒でやるには、特に親御さんがそこを薦めないのが大きいのかなと思います。平成の後半から若い人はちょっと減っています。でも、2025年は高校と大学の新卒生も入ってくれました。
社会人コースや短期コースは、50代や60代の人が多いです。
――学生の皆さんは、寮生活をされる方も含め、和気あいあいと過ごされてるんですか。
そうですね。年齢層もバラバラですが、お酒好きな人がいると、みんなで集まって飲みながら、作った野菜も食べていますね。自然農法に限らず、農業に取り組む前には、「農業って楽しいな」って思ってもらいたいじゃないですか。そこで一番大事な要素になるのが、「おいしい」っていうのを自分自身で感じることだと思います。作ったものはすぐ新鮮なうちに食べる。そこで「これはおいしい」「これは違う」とかを判断したり、品種の違いを学んだりする。その味をお客さんに宣伝する。農業では伝えることも大事になってくるので、野菜を食べる習慣を結構与えています。商品にならないものとかを寮に持って帰って、みんなで鍋をやったり、バーベキューやったり、そんな交流もしてもらっています。



最小で最高の食育は、家庭菜園にあり
去年、横浜の子ども会で行われる食セミナーに、講師として呼ばれました。子どもたち向けにセミナーをするにしても、難しい言葉では子どもたちの理解が追いつきません。そこで、「そもそも一般の農業って、どうして農薬とか科学肥料を撒くんだろう?」という問いかけをしました。
説明の仕方としては、そもそも人間って、綺麗好きですよという話をしました。特に日本人は、綺麗好きですよね。スーパーに行けば、見た目が綺麗なものを選びがちです。店員さんも「綺麗なものを並べなければいけない」と考えると、曲がったキュウリはダメだし、ちっちゃいトマトもダメということになる。また、市場に行けば、箱に詰められたトマトが、このサイズで、このグラムで、何個あるからこの規格、と付けられている。それ以外のトマトは、規格外品になります。規格外品はダメという価値観になっているのは、そもそもみんな綺麗好きという価値観からきていることを説明しました。
農家が曲がったキュウリにしないためにどうしたらいいかというと、虫に1枚でも葉っぱを食われてはいけないんです。キュウリなんて1枚でも食べられたら曲がってしまう。ほかにも、風で葉っぱが折れたらダメ、病気が出たらダメ、栄養が足りなくなったらダメっていう、さまざまな障害があります。だから、農薬を使わざるを得ない。農家さんは別につけたくてガスマスクをつけているわけではない。体に良くないのもわかっている。けれど、みんなが綺麗好きだという価値観があるから、この規格や、この農業の実態がある。誰が悪いわけじゃないんです。敢えて言うなら、消費者である我々が悪いんじゃないか、と思います。
そういう価値観で言うと、子どもたちさえもわかってくれるんです。「確かに、自分たちは綺麗なもの選んじゃった」「だから、農家さん農薬撒いてるんだ」って。

セミナーの時には、野菜も食べてもらいました。自然農法の今朝採りナスと、スーパーで買ってきた慣行農法のナスを、生のまま薄切りにして食べ比べしました。どちらがどちらだと教えずに食べて、セミナー後に答え合わせをしたんですが、みんな感動していましたね。ナスの生の薄切りなんて普通食べないので、食べてみると実はナスって甘いとわかります。今朝採りはなおさら甘いんです。スーパーは3日経った野菜なので、味比べといっても本当はズルしてるんですけど(笑)。でも、そのおかげで新鮮な野菜のおいしさ、自然のおいしさに気づくことができます。それに、自然農法の野菜は無農薬だからそのまま食べてもいいんだけど、慣行農法の野菜は洗うよね、といった違いも伝えています。
現在、そういう規格外品も、地域の直売所や道の駅で売られることが増えました。安いしおいしいので、曲がった野菜も少しずつ求められるようになってきました。インターネットで割れたせんべいも売られていますね。世の中の価値観も少しずつ変わっています。
農業の発展は、技術を学んで農家が増えればいいというわけではありません。消費者の価値観を変えなければ、進んでいかない。自然農法大学校でも、消費者にどう伝えるかを大事にしています。最小規模であり、一番の食育になるのが「家庭菜園」だと思っています。家庭菜園でもやっていくうちに、旬のものを自分で作れば、おいしいとか、楽しいとか、愛着があるといった感情につながります。自分で育てた野菜は、曲がってようが、ちっちゃかろうが、虫に食われてようが、絶対食べるんですよ。そういう価値観になっていくことによって、「たとえちょっと曲がった野菜でも買うよね」となればいいのではと思っています。自然農法ありきではなく、農業全体の知識を伝えていくよう努めています。

自然農法の魅力
――田中さんご自身は、自然農法の素晴らしさはどういうところにあると思われますか。
自然農法を使って、慣行農法に負けないぐらいの収量や味を目指していく難しさもあります。でも、自然農法の楽しさを追求する喜びはあるし、そもそもこの学校に来る人たちはそういう志が高い。優しい人が多いので、雰囲気がいいんですよね。稼ぐことはもちろん大事ですけども、そこに執着しすぎず、人への思いだったり、感謝だったりを大事にしている人が集まっています。そこに自分自身も感化され、楽しいなと思えることが多いですね。
昭和・平成の初期の自然農法は、批判される存在でした。それが、今では賞賛というか、憧れになってきたという時代の流れはあると思います。私もこの大学校に高卒で入学して、2年間学び、就職して、18年目になります。自分が農作業したり、食べたりする中で、自分自身の健康がずっと維持されてきていると感じます。なにより、「おいしい」っていうのがすごくいいですね。おいしいということは人に押し売りするのではなくて、お客さんの方からおいしかったとか、それで健康になったとかを自然に聞きます。特に、癌で食事もままならない人が、自然農法の野菜なら流動食で飲めた話などを聞くと、自然農法にはそういった不思議なパワーというか、生命力のすごさがあるなと思います。





元をたどれば農業は、人類が最初に行った生業であり、ライフスタイルとともにある、重要なものでした。生きていくためには食べられる植物を探し、育てる必要がある。花が咲くと種ができ、種が散らばったら増える、という植物のサイクルに対して、人類は技術で移植したり、収穫したり、種を取ったりしてきました。それがいつしか、農業は生活の1パーセントにも満たない世界になってしまっています。
現代の人たちは、景色に土がない、木がないっていう人が大半だと思います。自然とかけ離れた生活の中で、ただトマトがこういう発芽をして、こういう木になって、成長して赤い実になる、っていう姿を見るだけで感動する。人生の中で、きっかけって本当に様々だなと思うんですけど、自然農法にはそういった感動だったり、奇跡だったりを与える力があるんだと思います。そういったきっかけが人の人生を変えるんです。
今、改めて農業を学ぶというのは、原点に戻ることじゃないかと思います。土や自然を大事にする農業の価値観を学ぶことで、土の上に立つ者=人間として、生きる力や知恵を改めて見つめ直すきっかけになります。それに加えて、こだわり抜いた自然農法という手法で、「より科学的、効率的に」といった事とは別の軸で、農業の価値を伝えていく学校を目指しています。
――お話を聞いていたら、私も通いたくなってしまいました。
一度ぜひ見学に来ていただけたらすごく嬉しいです。公益財団法人の研究所の学校って、認知が全然ないんですね。ホームページでもわからない部分が多いので、やっぱり見てもらうのが一番だと思います。なるべく来ていただいて、言葉だけじゃなく、旬の野菜をその場で生で食べるなどして、感じてほしいですね。
自然農法大学校ホームページへのお申込みでも結構ですし、大仁農場へのお電話でも対応可能です。ぜひ、お待ちしています。


