アパートの空き部屋がワインショップに!学生が運営する“Wine House やまつづら”_筑紫女学園大学

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福岡県太宰府市五条にある「Wine House やまつづら」は、複数のショップが入居する「新崎アパート」にあります。ここを運営しているのは、筑紫女学園大学の学生たち。自らアパートのリノベーションにも携わり、酒販店として営業から角打ちまで行っています。
学生主体のワインショップという珍しいコンセプトの店が開店するまでには、どのような経緯があったのでしょうか。今回は筑紫女学園大学現代社会学部の上村真仁教授、OGの増田七海さん、4年生の山田光さんの3名にお話を伺いました。

画像引用元:筑紫女学園大学

かつては学生の街だった太宰府

――「Wine House やまつづら」を運営する組織は、上村先生のゼミが基になっているんですか。

上村先生:そうですね。ゼミに所属しているのは現代社会学部現代社会学科の3・4年生だけなんですが、1・2年生とか、あるいは違う学部でも、プロジェクトに興味がある学生に門戸を広げたのが「フィールドワーク研究会」という組織です。そして、ちょっと複雑なんですが、フィールドワーク研究会の一つのプロジェクトである「Re’born不動産」のメンバーが、「Wine House やまつづら」の運営に関わっています。フィールドワーク研究会には、キャンパス内での養蜂や、石垣島白保のサンゴ礁保全、獣害で駆除された鹿皮を活用するプロジェクトなど、現在、約10のプロジェクトが動いています。

――「Wine House やまつづら」があるのは、リノベーションしたアパートの一室とのことですが、元はどのような物件だったんでしょうか。

上村先生:今年で築42年を迎えた、木造2階建ての「新崎アパート」ですね。元は学生向けだったので、1Kのベランダもない古いアパートです。太宰府といえば、最盛期には7つの大学・短大がある学生の街でした。だんだんと大学の数も減ってくると共に、学生が入居しなくなったアパートも出てきて、オーナーさんが活用法を探されていました。そこで、ある会社が、「DIY可能にして、現状回復・現状復旧せずに出られる形で、事業用に貸してはどうか」とオーナーさんに提案されました。私たちは、その会社が1棟まるまる借りた物件をさらに借りて運営しています。

ワインショップは突然に

――アパートの活用から、ワインショップを作るまでは、どのような経緯で決まったんですか。

上村先生:私のゼミは、地域やコミュニティの活性化をテーマに地域での実践的な活動を行うことを柱にしています。学生の居場所作りとまちづくりを両立させるために、もともとは太宰府天満宮からすぐ近くの町家を借りて、授業を行ったり、月一のマルシェに出店したり、いろんな活動をしていたんですけどね。もっと学生が自由に企画し、色々な活動をしたいとなったときに、門前町は観光で栄えている場所なので、廉価で貸してもらえる物件がなく活動を広げることが難しいことが分かってきたんです。そこで他の場所を探し始めたんですが、門前町から少し外れたところにあるこのアパートの話を聞き、借りることになりました。現在は学生自らがDIYでリノベーションした2つの部屋を学生が工夫しながら活用することを目的にしています。

アパートは16部屋ありますが、他の部屋も別の方が改修されて、いろんなお店があります。面白い建物なので、ここを発信していくためにも、学生が他の部屋の人に呼びかけ、まずはマルシェをすることにしました。Re’born不動産がはじめる「Re’bornマルシェ」という名前で、3回ぐらいやりましたね。その中で古着屋さんをやってみたいとか、駄菓子屋さんをやってみたいとか、アイデアが出てきましたが、収益や継続性の面で取り組むのが難しかったんです。しっかりとした店舗として関われる仕組みがあったらいいなっていう時に、たまたま縁あって、ワインショップをやることになりました。

ワインショップに白羽の矢がたった経緯は、まず第一に、門前町の飲食店が少ないことでした。太宰府は観光客の方も含めて年間1000万人ぐらいが訪れる場所ですが、多くの方が天満宮に参拝したらそのまま帰ってしまうんです。参道のお店も夕方5時に全部閉まるし、10年前は飲食店もあまりありませんでした。門前町でまちづくりのワークショップに学生と一緒に参加していた時に、地元の方々の「住んでいる人たちが楽しい場所がない」「飲む場所があったらいいね」という意見が出ていたのが、私の頭の中に刷り込まれていたんですよ。また、私の友人に、兵庫県で古民家を改修して、ワインショップとアンティークショップをやっているご夫婦がいます。そのご夫婦が太宰府に遊びに来た時、「一緒にワインショップとかできたらいいね」という話をしていたことを思い出しました。学生の居場所づくりとしていろんな大学がカフェをやっていて、うちでもカフェをやりたいという学生もいたんですが、その一方で、カフェは嫌だという学生もいたんですよね。だから、ありきたりじゃないワインショップはいいかもしれないと思っていました。学生が興味を持つなら実現できるかなと思って、実際に学生に聞いてみたところ、やってみようということになりました。

やればやるほど、形になる店づくり

――リノベーションは学生さんたちが主体で作業されたとのことですが、OGの増田さんは元々DIYに興味があって参加されたんですか。

増田さん:私の場合は、2020年に入学したので、ちょうどコロナで何もできない時期でした。そんな中で上村先生が、何かやりたい学生やものづくりに関心のある学生を集めていたので、何人かの同級生と一緒に参加しました。私は親が大工で、DIY作業にも他の人より少しだけ慣れていたので、作業にも特に抵抗はありませんでしたね。

――増田さんは、ワインショップの話が出た時は、どういう風に思っていたんですか。

増田さん:その時はまだ20歳になっていなかったので、飲んだことはなかったんですが、周りの人がなかなか経験できなさそうなことなので、やってみようかなという気持ちでした。
始めた当初は想像もつかなかったんですけど、活動するうちにだんだんと私たちの活動を応援してくださる地域の方も増えてきて、お店に来てくれるようになりました。お客さんは地元の太宰府周辺の方が多く、毎週来られる方もいますね。また部屋自体も、自分たちが作業すればするほど形になっていくので、そういった達成感もありました。
現在は不動産関係に就職して空き家関係の仕事をしていて、空き家を利用してほしい人と利用したい人のお話を聞いています。ただ、自分自身でも空き家活用をとことんやってみたい気持ちがあるので、やまつづらには就職後も関わり続けています。

――素晴らしい。この活動が就職に結びついたんですね。山田さんはワインに興味があってこの活動に参加されたそうですが、ワインはどうやって好きになったんですか。

山田さん:両親に勧められて漫画『神の雫』を未成年の頃から読んでいて、「ワインってこんなに素敵なものなんだ」と思っていました。
実は進学先をこの学校に決めたのは、上村先生の活動をSNSでよく見ていたからです。高校時代にやりたいことがなくて悩んでいた時に、たまたま筑紫女学園の現代社会学部を勧められました。活動を見てみると、ちょうどこの建物のリノベーションをしている時期で、「こんな自由に学生が活動できる場所があるんだな」と思って、ここに入りました。興味があった活動で、好きなワインを扱えるということで、好きと好きがリンクしたというか。そこでやってみようと思ったんです。
実際にやってみて、学生でワインとこういう風に密に関わる機会は貴重ですし、飲むだけじゃなく、いろんな地域の方と関われる場所があるのは、すごく嬉しいなと思います。

それぞれのペースで地域と関わる学生たち

――上村先生からご覧になって、地元の方との関わりを通した、学生さんの成長ぶりはいかがですか。

上村先生:今までいろんな学生と関わってきた中で、すごく成長している人と、もうちょっと頑張れば良いところまで行くのに、続かないという人も、それぞれいますね。まぁ、アルバイトやサークル活動、そしてプライベートと大学生活はとても忙しいですから、ゼミやプロジェクトへの関わり方やペースが人それぞれ違うなということを、最近しみじみ実感しています。増田さんと山田さんは、おそらく人とコミュニケーションを取るのが好きなタイプなんだと思います。よく周りを観察して、「こうしたらいいんじゃないか」っていうアイデアを出せるし、自ら動けるので、そういう人は周りの人からすごく可愛がられます。だから、いろんな声がかかるようになって、チャンスが広がっていくんだろうと思います。

また、頑張っている学生を応援してくれる大人の方も、この地域にはたくさんいますね。ビジネスとしては大変ですけれども、すごく儲けないといけない枠組みでもないので、学生ができる範囲で試行錯誤しながら、自分ができることを伸ばしていってもらえるような場になればいいと思っています。

――カフェではなくワインショップという枠組みが、地域の大人の方との交流にマッチしているのかもしれませんね。ワインショップはいつ営業されているんですか。

上村先生:金曜日と日曜日、午後3時~7時という、非常に限られた時間の営業です。今年度に入り月に一度、金曜日に別の場所を借りて、角打ちも行っています。そこではボトル販売もしつつ、お客さんにおすすめのワインを説明しながら、カップでも販売しています。

山田さん:角打ちのお客さんの層としては、ワインショップと半分重なっていますね。ワインショップの常連さんが、知り合いの方を誘ってきてくださることもあります。

――学生の頃からお店を運営して、地域の方々と関わる体験は貴重ですね。ちなみに山田さんと増田さんは、将来の職業や働き方についてはお考えですか。

山田さん:私は模索中です。ワインに関われる職場がいいなと、ちょっと思ってます。

増田さん:まだ漠然としているんですが、ワインショップをやりながら、ゆくゆくはもっと経営に深く関われるようなお仕事ができたらと思っています。

――やまつづらの活動はお二人に大きな影響を与えているんですね。上村先生の活動は学生さんにフィットしていますね。

上村先生:ありがとうございます。この二人にはやまつづらがマッチしたんでしょうね。他にも色々なプロジェクトがあるので、学生さんそれぞれの興味を引き出していけると良いなと考えています。コスパ、タイパが重視される昨今、私のゼミに来る学生さんは特別なのかもしれません。私のゼミはブラックゼミと呼ばれているので(笑)

Wine House やまつづら

営業:金・日曜の15:00〜19:00(変更あり)
福岡県太宰府市五条4-11-15新崎アパート108号室

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