産後ドゥーラ 小西帆波さん【子供に寄り添うということは、その先にいる保護者の方にも寄り添うこと】

子供達に幸せになってほしい。その為に、ひとりひとりに寄り添いたい。
そんな想いから、フルタイムの保育士を辞め、フリーランスの産後ドゥーラになった小西帆波さん。
産後ドゥーラという職業や転職のきっかけなどについてお話を伺いました。

小西帆波さん

(一社)ドゥーラ協会 認定産後ドゥーラ

長野県出身。保育士として保育園にフルタイムで約10年間勤務した後、個人事業主のベビーシッターと産後ドゥーラに転身。木育インストラクター。

ひとりひとりに寄り添いたい

私は、一般社団法人ドゥーラ協会に所属する産後ドゥーラで、どんな職業かというと、基本的には産前・産後のご家庭を訪問して、育児や家事、ご家族の精神的なサポートをするんです。ベビーシッターとよく比較されるんですが、産後ドゥーラはお子さんを見守ったりお預かりしたりするだけでなく、保護者の方の生活に合わせて切れ目なく支援をします。

ちなみに、「ドゥーラ」はギリシャ語で、「経験豊かな女性」とか「女性を支える」といった意味があります。

私は保育士として保育園に10年ほど勤務していたんですが、その後ベビーシッターになり、今は産後ドゥーラになりました。ただ、今でも保育園ではパートで働いていますし、ベビーシッターとしてのお仕事も受けています。

産後ドゥーラになった過程をお伝えしますと、保育園で働いてきた中で、もっとひとりひとりに寄り添いたいという気持ちが強くなってきたんですね。ひとりひとりというのは、最初は子供に。というのも、子供達の姿がどんどん変わってきていて、愛着が心配な子が増えてきたんです。で、保護者の方も育てにくさを感じていて、「家に帰ると本当に大変なんです」というお話もよく聞いて。子供に寄り添うということは、その先にいる保護者の方にも寄り添うことなんだなと気付いて、ひとまずベビーシッターを始めました。

講座を受けドゥーラに

それで、ベビーシッターをする中で、お客さんから「ドゥーラみたいなことをしてほしい」と言われたんです。私は「えっ、ドゥーラって何?」という状態。インターネットで検索したらドゥーラ協会のホームページが出てきて、中を見てみたら、まさに私が思っていたひとりひとりに合わせて寄り添える仕事だったので、「これだ!」と思いました。

しかも、タイミング良く私が協会のホームページを見た直後に講座が始まったので、それに参加してドゥーラについて学び始めました。産後のお母さん達の体と心の変化とか、お子さんの発達とかお世話の仕方などについて、ロールプレイも交えた講座で勉強しました。

あとは料理、特に和食の作り方などを学びました。やっぱり日本に昔からある様なごはんは体に良くて、講座で同期だった人の旦那さんが、何をしても痩せなかったのに和食を続けたら5キロ痩せたとか、お子さんの便秘が治ったといった話を聞きました。

そうやってドゥーラについて学ぶんですが、「学んだ後、協会にお金を払ったら認定しますよ」というものでもなくて、基準を満たさないと協会の公認をもらえないんですね。筆記試験と調理の実技試験があって、私は調理の補講を受けた後に合格しました。

補講では煮物や胡麻和えの作り方のポイントを教わりました。実際に活動されているドゥーラの方が来て下さって、「ごはんは作り置きになることが多いから、もうちょっと味をはっきりさせた方が良いよ」といった様に、リアルなアドバイスをもらえました。

ドゥーラの仕事

ドゥーラの具体的な仕事の例としては、「今日は疲れていて寝たいから、子供の面倒を見てほしい」とか「検診の時に1人で大変だから一緒に来て」とか、お父さんの産後鬱のケアとか、色々あります。保育園の送迎もできますし、もちろん掃除・洗濯・料理もします。産前のご利用であれば、「つわりがしんどいので上の子供を見てほしい」といったこともありますね。


あとは、ご夫婦の記念日に「2人でお出かけをしたいから子供を頼みます」もあります。実際にそういうケースがあって、「子どもを預かってもらえなかったら、2人の時間を過ごせませんでした。本当に助かりました」と、とても感謝されて嬉しかったですね。

子供達のために

実は東京23区では、ドゥーラの数が足りないくらい引っ張りだこなんです。自治体の産後ケアの事業の中にドゥーラ利用が含まれていて、自治体のホームページに「このドゥーラが派遣できます」と顔写真付きの情報があったり、ドゥーラの利用料や、ドゥーラを目指す人の受講料を補助したりといった形で、かなりサポートが進んでいます。

ところが、私の住んでいる長野県では、まだ現時点(2024年6月)で認定ドゥーラが5名しかおらず、認知度がかなり低いので、そこがとても大きな課題ですね。私は地元の市長にパンフレットを渡しましたが、是非行政のサポートも得ながら、活動頻度を上げたいと思っています。

私の根幹には、子供達に幸せになってほしいという思いがあります。でも、今の社会状況、子育ての状況を考えると、やっぱり子供だけに支援をしていたのではそこを満たせない。保護者の方への支援もできてこそ、子供達が幸せになれる道が開けるのではないかと思います。