なりたいもの、やりたいことは何ですか、それに向けてどんな努力をしていますか。そんなことをよく訊かれるこの社会。立派な文句が見つからず、そんな自分がダメだなぁと悩んでしまう人も多いのではないでしょうか。
でも、なんとなくでも進んでいけば、そこに必ず何かは待っているもの。同じことをやり続けたり志を高く持ち続けたりしなくても、気付けばやってきたことが今の自分を作っている。そんなことを教えてくれる人に出会いました。
今回の話し手は、鳥取県八頭郡八頭町で地域おこし協力隊をしておられる岡田悠作さん。地元である鳥取県に、どうして地域おこし協力隊として戻ってこられたのか、それまでどんなキャリアをたどってこられたのかなど、お話を伺いました。
スポーツに取り組んだ学生時代
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岡田さんのご出身は鳥取県若桜(わかさ)町。兵庫県に隣接する、山間の町です。小学校では野球部、中学校ではバレー部と、スポーツに打ち込みました。
中学卒業後は隣の八頭町にある高校に進学し、ホッケー部に入部。
「勉強が苦手だったので、高校受験をするにあたって推薦はないですかって先生に訊いたんです。そしたらホッケーの推薦があったので、受験したって感じです。」
あまり純粋な動機ではない、と笑う岡田さん。しかしその後もスポーツ関係の進路に向かっていくことになります。
高校卒業後、スポーツトレーナーになるための勉強をすることに。それもまた「ふわっとした気持ちだった」と言います。大阪の専門学校へ、2年間通いました。卒業後にスポーツトレーナーとしての就職を試みるも、プロとしてやっていくことは難しいと感じ、マッサージの仕事に就くことに。
「スポーツトレーナーじゃなくても人の体に関わる仕事をしておきたいという気持ちはあったので、リラクゼーション系の仕事をすることにしました。」
転職のため帰郷
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4年間大阪でリラクゼーション系の仕事をしていましたが、転職をしたいと考え、いったん鳥取に帰って建築系の職業訓練を受け始めました。同時に、趣味としてホッケーを再開。岡田さんは大阪での仕事の経験を買われ、チームメンバーから体のケアやテーピングをお願いされることが多かったそうです。
「気持ちいい、とか言ってくれるんですよ。それでやっぱりトレーナーっていいな、楽しいなと思い始めていました。」
そんな中、訓練中に指を大怪我してしまい、1カ月ほど入院することに。建築関係の就職を考えていた矢先に怪我をしたこと、選手のケアをもっと知りたいと思っていたことから、退院後は建築系ではなく整骨院で働くことにしました。
再び大阪へ → 八頭町の地域おこし協力隊に
整骨院で働いている中で、怪我をした人たちが鍼によって回復していくのを目の当たりにした岡田さん。今度は鍼灸を学びたいと、2年半働いた後、再び大阪へ出向きます。
「鍼が一番患者さんに効いてるなと思ったんです。それでだんだん鍼灸に興味が出てきて。」
2度目の大阪では、3年間専門学校に通いました。卒業した時には31歳。その後はアルバイトをしながら鍼灸の修行を積みました。
修行後は専門学校時代に知り合った奥様と一緒に鳥取に帰って鍼灸院を開業しようと考え、場所を探し始めました。地元である若桜町や近隣の智頭町を回りましたが、なかなか良い場所が見つからなかったそう。そんな時立ち寄った八頭町の道の駅で、偶然知り合いと出会いました。
「その知り合いが八頭町の地域おこし協力隊の募集を教えてくれたんです。」
住まいの補助も出ることに惹かれた岡田さんは、協力隊に応募。2023年の4月から地域おこし協力隊として採用されました。
「今は妻が鍼灸院をやっています。妻の出身は大阪なのですが、僕は付き合い始めた当初から鳥取に帰るつもりだと話していたので、ついてきてくれました。」
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ホッケー部のトレーナーとしても活動
通っていた高校があった八頭町で働き始めた岡田さん。これまでの経験を活かしてストレッチ教室を開いたり、町の人の健康相談にのったりしているそう。町民の健康づくりの一環で登山道の整備も行っています。
「町のおじいちゃんたちと整備しながらのんびり登山してます。山からの景色がすごくいいんですよ。八頭町は高校生の時に来てたから、馴染みの町ということもあって住みやすいですね。」
高校以来やっているホッケーにも、地域おこし協力隊として関わっています。八頭町ではホッケーが盛んで小学校から高校までホッケーのクラブがあるそうですが、岡田さんは知識を活かしてチームのトレーナーをしています。2024年には八頭高校のホッケー部が全国大会で初めて優勝をしたのだとか。そうした大会にも同行し、選手のケアを担当しています。
柔軟に変化していく
活動の一環として農作業の手伝いもする中で、自分でも畑をやってみたいと考えるようになった岡田さん。食の面からも健康を意識したいと、近々畑を借りて野菜を育てる予定です。
「現在は整体を勉強中なので、任期後は鍼灸と整体を組み合わせた施術を、鍼灸院に取り入れたいと思っています。」
口数少なめながら、淡々といろいろなことに挑戦される岡田さん。これからも新しいことに取り組んでいかれるようです。
お話の間、何度もご自身を「ふわふわしている」と表現された岡田さんですが、小さい頃からやっているスポーツ、リラクゼーションや鍼灸の経験と知識が、全て現在の活動に繋がっているように見えます。それは一つの事に固執せず、柔軟に生きてこられたからこそではないでしょうか。
岡田さんのように変化をいとわず、柔らかく生きる。そんな人から学ぶことが、現代をせわしなく生きる人にとって大事なのかもしれません。
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