女子野球の普及を通して女性が輝くまちづくり:佐賀県嬉野市_女子野球タウン構想

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 近年様々なモノやコトを活かしたまちおこし・まちづくりが話題となっていますが、その中でもスポーツを通じたまちづくりに取り組んでいる自治体があることをご存知でしょうか。佐賀県嬉野市では「女子野球タウン」の認定第一号として、女子野球を通じて「女性が輝くまちづくりを女子野球とともに」をスローガンに掲げています。

 「女子野球タウン認定事業」は全日本女子野球連盟が女子野球を活用して地域活性化を目指す自治体を「女子野球タウン」として認定し、連盟と共に女子野球を通じて自治体を盛り上げていくことを目的とした事業です。2025年3月現在18の自治体が女子野球タウンに認定されており、それぞれの自治体で試合の誘致や普及活動を行っています。

 今回はその第一号として認定された嬉野市がどのような経緯で認定に至ったのか、また行ってこられた事業などについて、嬉野市役所文化・スポーツ振興課の江頭さんにお話を伺いました。

若い女性の人口減少がきっかけに

 嬉野市は元々女子野球が盛んだというわけではないそうです。少年野球チームに女子児童が入って野球をする程度で、女子野球チームはありませんでした。しかし嬉野市はスポーツ自体が非常に盛んで、嬉野町と塩田町が合併してできた町ということもあり、スポーツ施設が充実しています。屋外野球場が3つ、人工芝の球技場や全天候型多目的広場もあるなど、2万5000人弱の人口には多すぎるほどだと言います。

 そんな嬉野市は年々深刻になる人口減少に悩んでいました。特に女性がいないと人口の増加につながりにくいのが実情です。そこで、女性が住み続けたいと思うまちを目指すことになりました。

 女性が輝くまちになるにはどうしたらいいか考えた結果、取り組みの一つとして女子野球タウンの認定にたどり着いたそうです。女子野球が近年話題になって盛り上がり始めていたこと、女子野球の推進によって女性目線からまちの住みやすさを考えることに繋がることから、女子野球タウンとしてぜひ認定してほしいと、全日本女子野球連盟に申し出ました。

女性が使いやすい球場に改修

 女子野球タウン構想事業の一つとして、ネーミングライツ事業が行われました。野球やサッカー、グラウンドゴルフなど多くの団体に利用されている全天候型多目的広場のネーミングライツパートナーを募集したのですが、応募できる事業者を女子野球応援宣言事業所に登録している企業に限定することで、女子野球タウン構想事業の一環であることを強調しました。結果、隣町の企業がネーミングライツパートナーに決定し、令和4年5月に「朝日I&Rドーム」が誕生しました。同企業のトップが野球愛好者で、10年のネーミングライツを得る代わりに土だったグラウンドを人工芝に全面改修してもらうことになりました。これによって女性が使いやすくなっただけでなく、運動会の会場として利用している幼稚園や保育園からも喜びの声が上がったそうです。

 その他の事業として、豊富な球場設備を活かし、九州女子硬式野球リーグの試合の開催やソフトバンクホークスによる野球教室の誘致など、野球の普及に努めているのだとか。やはり野球と言えば未だ男性のイメージがあるのも事実。そうした施設が女性向きでないのは女子野球の課題の一つです。嬉野市ではまだまだ古い球場設備が多いため、女性でも気軽に利用できるように更新を検討していきたいと考えているそうです。

画像引用元:嬉野市体育協会

野球人口も増やしたい

画像引用元:嬉野市体育協会

 女性の人口減少も問題ですが、野球愛好者にとって野球人口の減少は非常に寂しいものです。お話を伺った担当の江頭さんも「私が子どものころは将来の夢というとプロ野球選手と言う子が多かった。でも今ではかなり少なくなった。」と時代の移り変わりを感じているそう。以前は嬉野市内の小学校に1つずつあった野球チームも、児童の数が減ったこともあり合同チームで成り立っている現状だそうです。

 そんな中、女子野球が少しでも盛り上がれば野球人口の全体的な増加や女性がスポーツに関心を持ち、する・みる・支えるスポーツへと繋がります。今後は女子野球の知名度を上げるため、行政でも頑張っていきたいと言います。

宿泊費の高騰で合宿の誘致が難航

 しかし課題も多く、なかなか順調には進みません。

 嬉野市と言えば日本三大美肌の湯として名高い嬉野温泉が有名で、昔から積極的にスポーツチームの合宿を誘致してきました。ところが近年の宿泊費高騰で、団体旅行より個人旅行やインバウンドの受け入れが進んでいます。女子野球の試合や合宿を誘致したいところですが、費用の問題が大きく立ちはだかっています。嬉野市としても補助制度を見直すなど、難しい状況の中でもなんとか前に進んでいけないかと模索しているところだと言います。

おわりに

 女子野球タウンという斬新な目線でまちづくりを行っている嬉野市。女性目線での施設整備などによって市民全体にとっても住みやすいまちづくりが進んでいる一方、課題もたくさんありそうです。

 これらの課題をどのように乗り越え、女性が輝くまちづくりをどう実現していくのか。今後も嬉野市の取り組みに注目が集まります。

嬉野市で活躍する女性を中心に製作したタブロイド誌
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