株式会社ダイオーズ【フランチャイジーであるFCO(フランチャイズオーナー)の人材育成が重要】

ダイオーズは、日本で初めてオフィスコーヒーサービスを事業化した会社で、オフィスコーヒーサービスでは国内首位級、米国では全米3位のシェアを持つ。コーヒー以外にも、提供サービスの範囲は広い。ピュアーウォーターやお茶など飲料とクリーンケア商品(マット/モップなど)のレンタル、空気清浄機や浄水器などのレンタル、さらにはオフィスグリーンレンタルや事業所向け定期清掃サービスなども手掛け、オフィスでの快適な生活環境を創造・演出している。

 街を走る(写真の)車を見かけた人も多いだろう。これが、ダイオーズがサービスを提供するための商用車。

フランチャイジーの育成

 ダイオーズの創業者:大久保真一氏(初代社長で最高顧問。が今春、米国で急逝)は、家業である米穀店を引き継いだ後に、ダスキンのフランチャイズに身を投じた。そして全国No.1の加盟店にのし上がった御仁である。そうしたなか、現在ダイオーズのさまざまな事業のなかで、唯一フランチャイズシステムを100%導入しているのが事業所向け定期清掃サービスを行うダイオーズカバーオールだ。現在350人のフランチャイジーが従事している。対象案件(主に中小ビル・施設)は営業部隊が開拓し、実際の清掃はフランチャイジーであるFCO(フランチャイズオーナー)の手に委ねられる。

 では、ダイオーズカバーオールではフランチャイジーをどう育て活性化しているのか。オペレーション部門を牽引する宮崎進一郎氏はまず、こんな具合に研修制度を噛み砕いて説明した。

「車の免許証を手にする場合と同じと理解してください。原則、10日間80時間の研修を行います。学課(清掃ノウハウやケミカルの知識を習得するための座学研修)と実践(諸々の機材を使用しての実技研修)。しかし実際には合格するまで1か月前後かかるのが普通です。それは実地:路上教習が徹底してなされるからです。ビルの中の清掃と一口に言っても多種多様、諸々の場所があります。また世界No.1の米国企業:米国カバーオール本社が提供する医療施設レベルの高品質な清掃サービスを提供できる、最先端のノウハウと技術を活用したシステムを生かすことを前提にしており、それらの全てに適応できる研修を繰り返し行いますので、仮免に至るまでは決して容易ではありません。従って免許を取得後も適宜、反復研修を行っています。“妙な慣れ”に流されないためです」。

高品質な清掃を徹底

 コロナ禍でオフィスの飲料需要が大きく落ち込んだ時期があったが、その穴を埋めたのが環境部門であり、カバーオール事業の貢献も大きかった。

 先に「医療レベルの高品質な清掃サービス」と記したが、具体的には米国のカバーオール社が開発した「医療レベルの除菌清掃:ヘルスベースドクリーニング」を指す。アメリカの環境保護庁が認可した高レベルな除菌クリーナーを使用した、定期的に人の手が触れる場所のオーダーメイドの除菌清掃だ。例えば衛生陶器/便器の内側は濃度の高い除菌剤を使用し、便座や手に触れる箇所は濃度の低い除菌剤を使うなど菌の多寡や汚れによる具合でケミカルを使い分ける。

宮崎氏はこう続けた。「ただ単に除菌剤を使用したからと言って、除菌・ウイルス除去にはなりません。細菌やウイルスの強さに応じた除菌剤の希釈の倍率や、接触の時間などまで配慮した倍率を変えるなど知識を駆使して作業を行わなくてはならない。そうしたニーズに対応した知見研修も、都度行います」とした上で、こう言い及んだ。

「そもそも清掃の契約は、当初の段階では費用負担を考え、限られたものになるのが常ですが、時間の経過とともに私どものサービス品質をご評価いただき、清掃の範囲や内容が拡がることがよくあります。そうした流れや動きは、フランチャイズオーナー側の仕事の幅を拡げることにも繋がります。特に新しい清掃を行う場合には当然ながら研修も不可欠になってきます。初期研修から始まり、その後もさまざまな厳しい研修を受け、一定以上の品質をご提供できるフランチャイジーだけが、当社の真のパートナーと認識しています。そうでなければ、お客様から厳しいお叱りをいただくことにもなりかねず、業界の中で生き残ってはいけません。決して容易ではないことは、研修のたびにお話しさせて貰っています。それがフランチャイズシステムの大原則でもあるからです」。

 厳しいのは至極当然と言える。契約で決められた高品質な清掃が出来ない場合、ダイオーズのブランドイメージはもちろん、同社が行う他の事業にも影響が出かねないからだ。宮崎氏は、こんな話もしてくれた。「私どもにはログブック(通称:交換日記)というのがありまして・・・」。所定の作業を終えたフランチャイジーは定められた用紙にお客様へメッセージを残す。例えば「今朝◎◎時に作業をさせていただいた際、◎階の電気がついていました。長時間の残業だったのでしょうか・・・」と書き残す。ビル側からは「有難うございました。確認したところ・・・」といった具合に書き込まれた返事が戻ってくる。交換日記とは、よくいったものだ。

 で、フランチャイズシステムの現状はどうなのか。こんなフランチャイジーの生の声に接した。脱サラ組。学習教室が入るビルなど、この日は6カ所の清掃をこなす。仕事は早朝、時には息子を伴って現場へ向かう。「仕事を終える頃は空腹。健康的ですよ。息子との共同作業は親子の縁も強めてくれるし。収入もサラリーマン時代より増えています」。そこで、人の懐を覗き込む悪い虫が頭をもたげてきた。「可能な範囲で収入状況を聞かせてもらえませんか」と、つい口を突いて出てしまった。

聞いてみるものだ。「担当件数から生まれる額は、月に約100万円。そこからダイオーズに27・3%のマージンが引かれます」。

 記してきたように厳しそうではあるが、一考に値する仕事といえそうである。