茅野市は、長野県の中部に位置する高原都市です。八ヶ岳をはじめとした山々に囲まれたこの地域は、豊かな自然環境と落ち着いた生活環境が特徴です。首都圏からのアクセスも比較的良好で、東京からは車や電車を使って2時間強で訪れることができます。
茅野市では、近年移住者が増加傾向にあります。自然志向のライフスタイルを求める人や、都会の喧騒を離れたいと考える人々にとって、理想的な移住先として注目されています。
今回は、茅野市の移住・交流推進室(楽園信州ちの協議会) の田中啓吾さんに、具体的な移住支援の取り組みや、移住者がこの地域でどのように暮らしを楽しんでいるかなどについて伺いました。
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四季折々の自然が楽しめる茅野市
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茅野市役所は標高801.6メートルに位置し、「日本一標高の高い所に位置する市役所」です。また、市内の最高地点は赤岳の2899メートル。標高差が生む景観の変化や四季折々の美しさが茅野市の魅力と言えるでしょう。
田中さんは、「特に冬場は空気が澄み晴天率も高いので、山がとてもきれいに見える日が多いです。八ヶ岳が夕日に赤く染まったり、雪で白くなったりして色々な顔を見せてくれるのが私のお気に入りの風景です」と話します。山好きな方には、垂涎の景観かもしれません。「田舎暮らし楽園信州ちの協議会」のInstagramとFacebookには美しい写真がたくさん掲載されています。
茅野市への移住者は40代と50代がボリュームゾーンで、最近の傾向としては子育て世代の移住が増加し、20代の若者も少しずつ増えてきているそうです。また、50代から60代は自然に囲まれた環境で穏やかにセカンドライフを送りたいという方も多いようです。
移住支援の取り組み
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茅野市では移住希望者に対して、市・商工会議所・不動産業者を中心とした民間の三位一体で運営する「楽園信州ちの協議会」で対応しています。主な取り組みは以下の通りです。
1. イベント・セミナーの開催
東京、大阪、名古屋などの都市部で行われる移住イベントやセミナーに出展。茅野市の自然や暮らしについて知ってもらう機会を設けています。
2. 物件見学ツアー
不動産業者とタッグを組み、市内の土地や中古住宅、建設中の物件見学を含むツアーを実施。移住希望者が実際に茅野市を訪れるきっかけとしても機能しています。
3. 移住体験住宅
1カ月間の移住体験が可能な施設を提供。ペット(室内犬)と一緒に滞在できる部屋もあり、人気を集めています。利用者からは「犬の体調が良くなりました」という声も挙がっています。
また、滞在中に仕事探しや物件の検討が可能です。茅野市には民営の「就職活動ができるカフェラウンジ KiiTOS(キートス)」があり、求職者登録をすると様々なサービスを受けることができます。
4. テレワーク・ワーケーションの推進
茅野駅直結の「ワークラボ八ヶ岳」や、市内の別荘地にデベロッパーが設けたコワーキングスペースで働くことができます。また、市内の宿泊施設ではワーケーションも受け入れています。
更に、茅野市地域創生課では「ウェルネステレワーク」の実証実験を行っており、参加者は集中力の向上、休息効果、食に関する講座や各種体験プログラムを受けながら茅野市でテレワークを行うことで、業務効率の向上や健康の増進効果を体験できます。
5. 新規就農希望者へのサポート
茅野市農林課が市内の農業従事者が集まる任意団体「信州ちの就農LABO」と連携し、農業を志す人へ向けた「農家を『知る』ツアー」を開催。市内の生産現場を巡り、現場の見学と就農の相談会を行いました。
6. 茅野市移住相談協力店 楽ちのステーション
移住者が開いたゲストハウスや飲食店、工務店が「楽ちのステーション」として登録されており、そこを訪れれば茅野市で起業した先輩移住者の生の声を聞くことができます(その時のお店の忙しさによる)。
子育て世代に訴求
若い世代では、「子どもを自然の中で育てたい」という理由で移住を検討するケースも少なくありません。そして、超少子高齢化の現代日本。全国どの自治体も子育て世代の移住者は喉から手が出るほど欲しいはずです。そんな中、茅野市では今年の2月17日から3月1日までの間、「セミオーダーメイド型子育て施設体験ツアー」を実施します(※記事公開日2025年2月12日)。
「幼稚園・保育園や子育て関連施設を巡りつつ、ご自身の就職関係の相談も含めて、ツアー参加者の方の需要を聞き取ってプランを組み、市内をご案内します。茅野市には『牧場ようちえん ぽっこ』さんのように特徴的な保育施設もありますので、お子さんの育つ環境を重視して移住を検討されている方にはぜひツアーに参加していただきたいと思います。」と田中さんは語ります。
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また、「茅野市には地域で子育てをする風土があります。」と田中さんは続けます。茅野市の小学校では、地元住民と一緒に田植えや野菜作り、登山などを体験できる取り組みが行われており、地域の子どもたちが自然と触れ合いながら育つ環境が整っているそうです。「私の子どもも茅野市内の小学校に通っていますが、地域のボランティアの方々が保育園児や小学生と一緒にお米や梅を作ったり、里山にハイキングに行ったりしてくれます。お子さんを連れて移住される方々も、温かい目で見守ってもらえると思います。」
まとめ
茅野市の移住促進の特徴は、官だけでなく民の自発的な取り組みも盛んな事でしょう。さらに、「地域で子育てをする」という文化が、若い世代の移住を後押ししています。
田中さんは「行政だけではどうしても対応しきれないこともありますので、市民の皆さんも含めて動いていただきつつ、移住者にとってもさらに暮らしやすい茅野市になっていけばと思っています。」と語ります。
また、「移住者が増えてきているという実感はありますが、私たちの係の名前は『移住・交流推進室』なので、移住者を増やすだけでなく、交流もより盛んになるように取り組んでいく所存です。例えば、移住者同士のコミュニティ作りのお手伝いは元より、地域の方との橋渡し役も行政として大事な仕事だと考えています。そうして地域が活性化していけば移住者の定着率も上がるでしょうから、移住と交流の二本柱で、より楽しい茅野市を作っていけるようにこれからも頑張ります。」と展望を教えていただきました。
これからも、茅野市の魅力を最大限に活かした官民の取り組みが、多くの人々を惹きつけることでしょう。茅野市に興味のある方は、ぜひ移住・交流推進室に相談してみてください。豊かな自然と温かいコミュニティが、きっと新しい一歩を支えてくれるはずです。
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・茅野市移住・交流推進室
・田舎暮らし楽園信州ちの協議会 ウェブサイト Instagram
・茅野市移住体験住宅
・茅野市子育て子育ち応援サイト どんぐり
・就職活動ができるカフェラウンジ KiiTOS ウェブサイト Instagram
・ワークラボ八ヶ岳
・楽ちのステーション
・牧場ようちえん ぽっこ