週末起業から数十億円規模へ!DeNA発「スマート修繕」の急成長曲線

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「こういう起業もあるんだ」。「いやこういう起業を産み出す枠組みが世の中にもっともっと広がって欲しい」。スマート修繕を取材して、心底から痛感した。

 スマート修繕が展開するビジネスやその実績は、図表も踏まえ後で詳しく述べる。

読者諸氏の中にもスマート修繕が生まれた「そもそも」を知ると、「自分もかつて・・・」と同様な体験を思い出す御仁も少なくないのではないか。

 スマート修繕は2022年1月、現代表の豊田賢治郎氏によって設立された。豊田氏は、起業の「契機」をこう話した。

「住んでいた分譲マンションの管理組合で、理事長になったのがキッカケでした。あみだクジの結果です。いま思えば、まさに妙なめぐり合わせです。理事長になったタイミングで、マンションの修繕工事の検討が課題に上がってきたんです。マンションの管理会社から修繕に関する提案やレポートが持ち込まれて来ましてね。しかしそれらをみても、そもそも工事が必要なのかにはじまり、提案されているものが本当に必要な工事なのかも分かりませんでした。ましてや、正しい予算金額なのかなど、ピンとこないことばかりでした。ですが理事長にアミダくじの結果とはいえ就いてしまったわけですから・・・適切に対応したい、しかし例えば見積書の妥当性を確認するために他社からの見積書と比較するにしても、どうやればいいのか。誰に相談すればいいのか分からない。確かに共用部の修繕工事は必ず起こる問題なんですが、住民側として適切に発注管理ができないという状況、課題を痛感させられました。このことがスマート修繕の立ち上げに、背中を押されたそもそもとなったわけです」。

DeNAで醸成されていた起業への道程

 豊田氏は当時、DeNA(ディーエヌエー)で禄を食んでいた。「起業という意思を持っていたわけではない」と言うが一方、「DeNAの、新規事業立ち上げに対する積極的な姿勢」に惹かれての転職だったという。

 具体的に「積極的な姿勢」の裏付けは、社内ベンチャーを支援するインキュベーション組織:デライト・ベンチャーズの存在に象徴される。「起業家:南場智子(DeNA会長)氏が作った枠組み/ベンチャーキャピタル」とされる。南場会長の起業家ぶりは、例えば日本経済新聞:web版がこんな見出しで伝えている。是非、ご一読を。

6月16日:DeNA、「南場学校」が生む連続起業 資金・ノウハウ・仲間を支える>。

6月18日:DeNA南場智子会長、社員の起業推す 「人の固定化は最大の悪」>。

 デライト・ベンチャーズがいつぐらいからDeNAで役割を果たしていたのかは定かではない。が、豊田氏はこう語った。「創設時から居た、という先輩方の話によると、南場会長の意向で生まれたようです。『優秀な人材が起業のために会社を去って行ってしまうのは、もったいない。優秀な社員には中でやってもらう。でなければ外でやったものに、投資ができる仕組みを作った方が得だ』という話を聞きました」とし、こう続けた。

「私とスマート修繕の場合はこんな経緯で歩みを開始しました。起業プログラムを運営するデライト・ベンチャーズの、不動産領域に関する社内アンケートに回答したんです。軽い気持ちで応じたアンケートでした。ええ、内容は先にお話ししたマンション管理組合の理事長として体験した「実感」「課題」でした。アンケートに応えたところ、担当部門と面談が設定され、『自身でリサーチしてはどうか』という提案を受けました。

爾来、豊田氏の生活は一変した。DeNAの仕事をこなしながら、平日の夜や週末のオフの時間にリサーチ、各種の検証を進めるという「週末起業」というスタイルに、である。「関連する業界の関連者や実際にマンション組合の方々にヒヤリングを重ねました。結果は、『現状はやはり、あるまじき状態』という想いが強くなっていきました。2度にわたって実施したテストサービスで顧客から聞いた声に、次第に新規事業に対するボルテージが上がり、『絶対にこの新しい事業を立ち上げたい』という起業への決意が固まりました。いま自分を振り返ると、目標ができると、その達成に向け「やり切りたい」という、持って生まれた性分なんです。妙な言い方かもしれませんが、幸いしました。デライト・ベンチャーズのプログラムに倣いステップをひとつひとつ進めていったら、自然と決意が固まっていったという感じでした。デライト・ベンチャーズには事業の構想・各種検証・構築などのノウハウ、支援体制があります。スマート修繕は、デライト・ベンチャーズなくしては実現していませんでした」。

スマート修繕が展開するビジネス

 提示のビジネス絵図にも見て取れるように、スマート修繕が展開するビジネスはこう理解すればよい。一口で言えば豊田氏が上記の様にマンションの管理組合理事長として味わった悩み・課題を、解決してくれるビジネスである。噛み砕く。

 主力事業はマンションなど大型建物の共用部の修繕工事の「見積支援サービス」。優良業者の紹介(=複数の事業者&相見積もり取得)にはじまり、最後の工事完了までを連合体の一級建築士事務所が伴走する。また、過去取得した大量の見積書を各工種の明細レベルでデータベースに登録しサービス独自の「見積データベース」を構築しており、その活用により各見積書を単価レベルで査定し、適正価格を実現している。結果、「既存の見積もりからの減額成功率当初の管理会社の提案価格に対し、減額成功率95%以上」「大規模修繕の戸当たり減額目安、約20万円以上」「全国見積実績2000件以上」という積み重ねを残している(2025年9月現在)。

 言い換えれば「管理会社にお任せ」がなくなり「工事内容/工事のタイミングの適正化」が図られ、「妥当な工事金額=住民に不安なし」が実現する。

 詳しくはスマート修繕のホームページに譲るが・・・。例えば東京豊島区のタワーマンション(総戸数約350戸)では、他社の見積もり:5億5000万円に対し4億5000万円。名古屋市の(約65戸)では、8100万円に対し6700万円といった状況を実現している。

 無論、事が全てスムーズに運んだというわけではない。豊田氏は、こう振り返った。

「サービスを実際に開始するまでの2年間、準備期間にはハードルとの闘いでした。サービスを担う登録工事会社集めなどは、高いハードルでした。不動産や建築業界の経験、ネットワークが全くなかったわけですから・・・。アポイント取ることも容易ではなく、ようやくお約束を頂いても手厳しいお言葉を頂くケースが多く、要するに断られ続きという状況でした。靴を擦り減らすだけの日々が来る日も来る日も続いた、時期がありました」。

 そんな「苦」の時間を積み上げて初めて起業は、と言ってしまうのは容易だが・・・

 がいま、豊田氏の口から「月間の案件ベースで、数十億円の見積書が流通するまでに着実な成長をしております。建物タイプでは1000戸前後の多棟型マンションや40階建てタワーマンションでも実績を残すことが出来ました」とし、今後にこう言及した。「主力事業の見積もり支援サービスの成長・発展と周辺業務の展開の加速を進めていきたい。また、これまでの資金調達はDeNAからでしたが、今後は外部からの資本も導入し更なる成長の加速を目指します」とする言葉が突いて出ていることも事実である。

 大手企業発のスタートアップ企業。そんな起業の在り方の増加は、日本の産業構造に大きな光明となると確信する・・・