元DeNA出身の起業家が挑むアパレルECの革新。DROBE山敷社長インタビュー

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 DROBE(ドローブ)。2019年4月に設立された。女性向けアパレルのEC事業を展開している。詳細は後述するが、顧客に寄り添った「提案型」ビジネスモデルが最大の特徴。MBOを経て設立された異色の経緯も興味深い。2023年10月(サービス開始から約4年)末時点で、登録累計会員数は20万人を突破。本稿の主人公である、創業者で代表の山敷守氏は「正直、満足はしていません」としている。山敷氏を取材する機会を得た。

MBOで設立された特異な経緯

 東大時代に起業サークルに入り、IT企業にインターンとして身を置いた。インターン先が設立する子会社の役員として、起業に携わった。2006年の頃である。山敷氏は「今流に言えばFacebookのような、オープンプラットフォームの大学SNSを運営する会社でした。設立当初は順調でしたが、2年目で調子が落ちて終了。起業自体は決して容易でないことを実感しました」としながら、こうも続けた。「本業として、自分のプロジェクトビジネスをという選択肢に、魅力を覚えたのも事実でした」。

 確かに起業、ましてや学生業との二足の草鞋となると容易であろうはずがない。時間が限られる。その中で、一人で管理・マーケティング・営業等々の全部門を担わなくてはならない。資金調達も然りである。

 がまさに、機転の利く実業家たる所以。山敷氏は学生起業の顛末から得た教訓から、「大企業の基盤の中で、事業を立ち上げプロジェクトビジネスを実現する」という流れに舵を切った。

 卒業後は、DeNAに入社。「若いうちから事業を任せてくれる風土があったからです。現に在籍した4年の間に、多くの新規事業に携わらせてもらいました」。そうした中で頭に住み着いたのが、「リアルな産業とネットや普及が著しいデジタルを絡めた事業に、成長の伸び代があるに違いない」という強い思いだった。確信と言い換えてもよい。

外資系コンサルのボストンコンサルティング(BCG)Japanに転じた。そしてコンサル活動で事業の在り様を子細に知ることに注力するのと同時に、デジタル事業の立ち上げを日本の代表的な企業と組んで一緒に行う『デジタルベンチャーズ』という部隊の創設を主導した。

記した流れの下りは、「うんうん」と頷くだけで読み過ごして欲しくはない。山敷氏が「DeNAの企業風土」「ボスコンが内包していた新規創業の可能性」を、知り抜いていたことに思いを馳せて欲しい。でなければ、今日のROBEは存在していなかったと言って過言ではない。

結果として三越伊勢丹と一緒に立ち上げたのが、デジタルベンチャー:DROBEだった。三越伊勢丹とBCGjapanから、約2年分の運転資金を調達しての船出だった。三越伊勢丹には「EC分野への進出・拡充」という思いが強かったから、状況の推移次第で「完全子会社化」の選択肢も明らかにしていた。山敷氏にも「伸びるのであれば子会社化も・・・」という認識が当初はあった。

が進んだ道は、MBO。山敷氏は、「私個人としてもMBOを介して独立する際には、少なからざるお金を出資しました」と振り返っている。が何故MBOに至ったのか。三越伊勢丹との遣り取りや、事業体に所属していたスタッフの具体的な思惑等は伝わってきていない。

ここからは、あくまで私の憶測である。山敷氏は、「MBO以降では中核となった1社のほか、計10社のベンチャーキャピタル(VC)から出資がありました」とした。新規事業の成長性・将来性に関し、VCの判断(出資)の持つ意味は大きい。彼らは先々(の上場に際して)の保有株式の売却益等を前提に、出資する。MBOに至る道程では、VCの動きが大きな役割を果たしたと認識する。

兎にも角にも、DROBEはMBOを経て生まれた。2019年、山敷氏はトップの座に就いた。周知のとおり、日本経済がコロナ禍に晒される前年である。果たしてコロナパンデミックは、DROBEの旅立ちにプラスと働いたのか、それとも・・・

DROBEの、顧客に寄り添った「提案型」ビジネスモデル

 まずはDROBEの独特なビジネスモデルに、目を転じる。

 会員は登録時に70問に及ぶ設問に応じる。AIを使いながらのスタイリスト(全体で約50人)との遣り取りだ。具体的な身長・体重・職業などの属性にはじまり70問・・・。体形なども含まれると知り、素朴な疑問を感じた。

DROBE 設問一例画像

人は誰しも、とりわけ女性ともなれば余人に知られたくはない、言葉を選ばずに言えば身体に関するコンプレックスを持ち合わせるケースも少なくない。ストレートにぶつけてみた。山敷氏に同席していた女性スタッフの答えに、頷かされた。

「私にも他人には話したくないことがあります。具体的には身体の部位などです。が登録当初の設問時には分かりやすく具体的に答えることが出来ました。スタイリストとは、お互い顔を曝け出しての遣り取りではないのです。そのことが妙な安心感になったからです」。

 そうして集められた情報に基づき、会員からの注文に応じる。「春先のプライベートな外出時の小物を含めた洋装が欲しい」。スタイリストがセレクトしたコーディネートが、遣り取りの画面上に現れる。事前確認ではいくつかピックアップしたアイテムの中から「欲しい」と思うものを選ぶ。最終的にはスタイリストが選び自宅に配送する。顧客はどんなものが送られてくるは、実際に目の当たりにするまで分からない。商品の中に、「うんん・・・」いささか首を捻るものがあった場合はDROBEの送料負担で返品が可能。

 返品された商品は、DROBEの在庫にはならない。DROBEは(ECを含む)アパレルメーカーの、代理店的な存在だからだ。50社/200ブランドと連携している。

DROBE 商品画像

 よくよく考えられたビジネスモデルだ。山敷氏は「コロナ禍がビジネスを認知させ収益を生む契機となったのは事実です。がその風向きに変化が起こって以降は、それがある種の弊害となっているもいえると捉えています。移ろいゆく社会情勢の流れに対応しうる枠組みを構築しなければなりません。登録会員数20万人突破を、必ずしも満足していないと申し上げたのはそういう意味からです」と、自らに言い聞かせるように語った。

今後を見据える山敷氏の姿勢

 今後の方針・展開として「男性版」が検討されている。耳にした最初は「スーツの類はともかく、この半世紀余り殆どは女房殿の着せ替え人形だった」と「?」を感じた。が最近の若者層は「肌の手入れ(化粧)」に象徴されるように、「美しく見せる」ことに関心が高いことを考えると「お手並み拝見」という気になった・・・

 山敷氏は「上場を視野」とした。同時に「社員にはストックオプションとして・・・」と言及。経営者として社員としっかり向き合っていることを、痛感した。