「社員が辞めない会社」を創る:yellba西川氏の挑戦と、その原点にある思い

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 諸々のメディアでいま、「突然の退職者を防ぐために、上司・企業が打つべき施策」云々といった類の企画が相次いでいる。「突如の退職者」問題が切実になっている証し、ということだろう。

転職者の仲介を手掛けているリクルートナビネクストが、興味深い調査結果を発表している。転職経験者100人を対象にした「転職理由ランキング」。上位は、「上司・経営者の仕事のやり方が気に入らなかった(23%)」/「労働時間・環境が不満だった(14%)」/「先輩・同僚・後輩との関係が上手くいかなかった(13%)」/「給料が安かった(12%)」がそれぞれ10%以上を占めた。「給料が・・・」という向きには、それ位は事前に調べて入社に備えるべきだろうと言いたい。問題は上位の3因。一口で言うと『人間関係で退職した』とする声である。

 本稿の主人公は、yellba(いえるば)の創業者社長である西川和範氏。自らの体験をもとに「離職者をどうすれば未然に防げるか、働きやすい企業環境をつくるにはどうすればよいのか」と取り組んでいる。が冒頭に記した通り「課題」はいまや「世を挙げて対峙している時代の流れ」の感が強い。そうしたなか、2023年6月に法人を設立。翌年:1月に本格的に事業を開始した超スタートアップ企業。

正直に言う。取材を申し込むかどうか、初めは迷った。コンタクトを執ることに強く背中を押されたのは、一口に言えばyellbaの「ビジネスモデル」に惹かれたからだった。

yellbaの離職防止策・職場環境対応策の枠組みが、評価に値すると捉えられる理由

 評価される理由、としたのは既に導入し実績が認められる企業が存在するからだ。

yellbaのホームページから失敬した別掲の絵図を、目に焼き付けてここからの説明を聞いて頂きたい。1人の社員(実名がベストだが匿名でも可能)からの意見・提案の投稿で、「問題」解決に向けた第1歩は始まる。「第1歩」は、全社員が閲覧することが可能。そして閲覧した社員(同)の反応(支持率)が可視化される。それを確認した組織管理者(経営陣)が、回答(見解)を発信する。「支持率が半数を超えている以上、看過できない」、「会議等に諮り、見解をまとめる」といった具合。これは「提議された課題に関し、会社として正面から向き合う」いう「約束」と認識できる。そして、ことが動き出す。

 2社が導入していると記したが、西川氏は正直者。「一口でいうと、知り合いの企業」としたが、いわば実証実験が行われているのだ。1社は求人広告の媒体を運営している企業(社員80名余)、1社は印刷・デザイン業者(35名)。既に半年余り2社では、この枠組みへの取り組みが行われている。西川氏は「中小企業では離職対応、働きやすい職場環境の整備が遅れている」とした上で、「先々の課題として、500名から1000名の社員を擁する企業も視野に入れている。が現状では300人水準までの企業に照準を当てる。現場(下)から上がってくる声を、職場環境や経営に反映し易い企業規模と捉えるからだ」。

 実証実験の持つ意義は大きい。いくらyellbaの考え方を熱く説いたところで、管理・経営層は「具体的にどうやれば、どう会社が変われるというのか」を知りたがるからだ。「実証実験の流れや結果」をその手に西川氏はいま、日々靴を擦り減らしている。

西川氏がyellbaを起ち上げた、過去の体験

 筑波大学生命環境科学研究科博士前期課程を修了した西川氏は、人材系ベンチャー企業に入社した。研究者・大学の教授職の道は「どうも僕には向いていないと思えたもんですから」と、問わず語り。営業・新規事業開発・買収事業のPMI(統合後の体制整備リーダー)などを体験した。が何故か、人事コンサルティング会社に転職。そして23年6月にyellbaを設立した。「何故か」に対し西川氏は、こう噛み砕いた。

「卒業と同時に入ったベンチャー企業は、社会的意義のあるサービスを提供する素晴らしい会社だった。が現場の社員は疲弊し、次第に会社への不満が募っていました。社会を良くしたいと集まった仲間が、仕事にやりがいを見出せなくなっていく姿をいやというほど目にしました。なんとかしなくてはと思い、直属のスタッフを私なりに“脱疲弊・脱不満”に導く努力をした。しかしそうした属人的な対応では、会社全体(のスタッフ)を蘇らせることはできません」。

 こうした忸怩たる思いの積み重ねが、yellba設立につながったわけだが西川氏は「法人設立に当たり『いえるば』と社名をつけたのは「みんなが胸にしまいこんでおかず、皆が言いたいことはいつでも口にできることが問題解決の大前提だと確信したからです」と、改めて自らに言い聞かせるように語ったものだった。

仕事って何なんだ

 yellbaを興した西川氏は、「仕事」をどう捉えているのか。私を含め多くのワーカーが、どんなつもりで仕事とどう向き合っているか自身の「明確な指針」は希薄ではないだろうか!?

 西川氏は「仕事で大切にしてきたことは、3つある」とした。

「仕事は自ら創り出す。上司の仕事を理解し任せられる存在になることが、早期のキャリアアップにつながると考え、仕事に自発的に取り組む姿勢を培ってきた」

「全ては成長の機会と考えた。必ず任された仕事から逃げず、真剣に向き合うようにしてきた」

「人との繋がりや感謝の気持ちを大切にする。どんなに成果が求められる場面でも、他人を蹴落としてまで・・・というのは、自分の価値観にそぐわない」

 その上で若者に、こんなメッセージを送っている。

「働くことを是非、前向きに充実させて欲しいと思う。起きている時間の多くを仕事に費やされることは事実。だからこそ仕事をただこなすものにせず、できるだけ楽しみや遣り甲斐を感じられるように取り組むことで人生が、より豊かになるはず・・・自分の人生は自分で選んでいけるということを大切にしてください。今は困難な時代で、逃げたくなることや目を背けたくなることも沢山あるかもしれないが、あなたがあなたの人生の主役。自分の道を信じ、充実した人生を築いていって欲しいと切に願っています」。

 西川氏の言に、yellba立ち上げの礎をいま痛感している。

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