Vitabi (バイタビ):海外旅行者の救世主!CEO自らの体験が生み出した画期的プラットフォーム誕生の軌跡

 時に5年後~10年後の成長への軌跡を見届けたいと痛感する、スタートアップ企業に出会うことがある。その理由は一口に言えば、「世の中が求めるビジネスモデル」。いままさに、そんなスタートアップ企業に出会った。

 Vitabi(以下、バイタビ)。11月1日に『【世界中どこでも3分で病院予約】 海外旅行者必携アプリ「Vitabi」 β版ローンチ』と題する情報を発信した。サブタイトルには<増加するインバウンド・アウトバウンド旅行者の「もしも」の味方に>と銘打たれていた。本文は、次の様な内容。

「本日ここにバイタビ(代表取締役CEO:Nhat Lieu、以下ニャット リュウ)は、海外で体調を崩した旅行者向けの病院予約プラットフォーム:バイタビのβ版を日本人対象に提供を開始します」。

β版アプリ(日本語版)https://app.vitabi.us/jp

β版アプリ(英語版)https://app.vitabi.us/en

 読者諸氏の中にも海外の滞在先で体調を崩した御仁も、少なくないのではないか。慣れない環境では、受診(病院探し)のハードルはかなり大きい課題だ。そんな厳しい状況に対しバイタビでは、適切な医療機関の検索・受診予約を仲介・代行する。手間暇を時間に換算すると最大90%削減。旅人にストレスフリーの医療アクセスを提供するというのだ。

 そしてこのリリースは「今後も日本を含む世界中の医療機関、保険会社と提携を拡大し、インバウンド・アウトバウンドに関わらず全ての旅行者を支えることを目指しています」と、結んでいる。要するにリリースは「β版」とあるように「途上報告」であるが、並行して「宣言書」と捉えることができる。

バイタビ至った経過、失敗は発明の母!?

 ニャットリュウ氏を取材する機会を得た。世辞抜きに、「超」の冠がつく「異才」の持ち主である。長崎県大村町出身。高卒後の2003年にギャップイヤー(高卒から大学入学までのモラトリアム)を取得し、中小企業向けマーケティングコンサルを開始した。かつその傍ら、「ノーコードによるDX支援事業」「ブロックチェーン技術を駆使したクラウドファンディングプラットフォーム開発」「AI強化学習のプロジェクトを始動」etcといった具合だ。ニャット氏は「起業が常に頭にあった」とした上で、「30以上のアイディアを検討していた」と「当然」という口調で語った。

 そして現に、業を興した。「バイタビ」ではない。バイタビの現状は後述するが「成功階段」を着々と歩んでいる。がそれではあまりにも出来過ぎ?というもの。実は起業の第1弾は、失敗している。

 アフリカ人向けのAI問診アプリ。大学1年の時、「社会の課題を解決する事業を」で意気投合した、3人での立ち上げだった。着目したのは「アフリカでは医師や医療のクオリティが低い地域が少なくない」という点。「AIを活用したパーソナルドクターを提供したらどうか」と考えた。ニャット氏は口元に軽い苦笑いを浮かべいま、こう振り返っている。

「2週間後に経産省主催の“J―StarXフィンランドコース”に照準を合わせ、それまでに派遣プログラムのアプリを開発しようと事業プランを固めて、片っ端から現地の人たちに(英語で)意見を求めるなどしました」

 が、頭で描いたビジョン。言葉を選ばずに言えば、余りにも時間をせいた行動。当然の帰結ということか・・・うまくいかなかった。SNSでのヒアリング結果から、「ターゲットユーザーが経済的にアプリを利用するのが難しい」ことが分かった。

体験が生み出した「バイタビ」への下痢1日50回の旅路

 AI問診アプリの道が閉ざされた中、件の3人は早々に鳩首会談に明け暮れた。的は絞られていた。「適切な医療を受けられない人々に適宜なアクセスを提供する」という、共有するミッションがあったからだ。

 遣り取りの中で話題に上がったのが、「海外旅行中に体調を崩すケースも少なくないのではないだろうか・・・海外で病院に行くのは大変なはずだ」だった。「めちゃめちゃ盛り上がった」とニャット氏は、振り返っている。

 それは、机上の論にとどまらなかった。話が盛り上がったのとほぼ時期を同じくし、ニャット氏は2023年にインドに2週間の一人旅をした。インドの観光名所(ヴィクトリア記念堂などで知られる)コルカタを訪ねた。そこで腸炎に恵まれた、いや死ぬほど苦しんだ。「1日に50回以上、トイレに座り込んだ」という。その結果、「海外での受診(病院探し)の難しさを、いやというほど体験させられた」。文字通りの実体験である。

 改めて市場調査をし、今年24年の元旦にアイディアをピボット(方向転換)した。

 冒頭に11月1日付けでバイタビの情報発信を、記した。「β版」としているが、体制整備はどこまで進んでいるのか。ニャット氏は「30名以上の旅行客へのインタビューや保険会社ともヒアリングを進めており、現在は日系の旅行代理店と提携を組み8月からサービスを提供。国内外の医師・クリニック・保険会社との提携に向けて動いています」とした。

エンジェル投資家

 私は魅力あるスタートアップ企業を掘り起こす際に「ベンチャーキャピタルの見解」、そして「エンジェル投資家の存在」に着目することにしている。

 バイタビでは3人のエンジェル投資家の存在を知った。

 渋川駿伍氏。「ニャット君に初めて会ったのは、彼が高校生の頃です。早熟の天才とはまさに彼を指す言葉だと感じました。会うたびに実力をつけて、成長していく姿を目の当たりにしてきたからこそ今も昔も応援しています」と言い及んでいる。

 美山裕薫氏。以前、ニャット氏がコンサルティングをしていた企業の代表。「頑張る若手の経営者に寄り添いながら、チャレンジする姿を楽しみたい。資金調達の話を聞いた時は、即座に応じました」と楽しそう。

 相川光生氏(公認会計士)。「渋川さんが経営する企業の株主で、紹介を受けニャット氏に大きな可能性を覚え出資をした」とキッパリ。

 そこまで評価され出資までしてくれたエンジェル投資家に応えられなくては、「ニャット/バイタビに成長は期待できない」として過言ではない。

β版アプリ(日本語版)https://app.vitabi.us/jp

β版アプリ(英語版)https://app.vitabi.us/en