デザイナー 久保一恵さん【興味のあることは諦めずに】

仕事の向き不向きは誰にでもありますが、不向きなことに気付かずにその業務で働き続けてしまうケースもあります。

今回は、20代で不向きな働き方を経験した後、それまで経験のなかった、しかし自身に向いているクリエイティブな仕事を手にした久保一恵さんにインタビューしました。

久保一恵さん

デザイナー

神奈川県出身。20代の頃は会社を転々として働く。その後、結婚・出産・育児を経てから自治体の就労支援講座を受け、デザイナーの道へ。現在はフリーランスとして活躍している。

働き方に疑問を感じなかった

私はテレビ番組がすごく面白くて人気のある時代に育ちまして、東京にある専門学校の放送メディア科で学びました。そして、学校を出た後はミュージックビデオなどを作っている会社に就職しました。

ずっとミュージックビデオを作りたかったので、念願の仕事に就けたんですが、3ヶ月で辞職してしまいました。自分では「覚悟が足りなかった」と思っています。

というのも、当時の映像業界の働き方は、男女関係なく徹夜の連続で、大げさに言うと人権などない状態。それでも私と同じ環境で頑張っている同期は沢山いましたので、おそらく会社が悪いというよりは私の覚悟が足りなかったのだろうな、と。

そして、そちらを辞めた後なんですが、当時は派遣社員というものも大きく流行していた頃でして、それにまんまと乗せられて20代を送りました。

どうせ派遣されるならば遠い所に行きたいと思って九州を希望したんですが、それは叶わず、東京から割と近い長野県の寮付きの職場に派遣されました。そこで今の夫と出会ったので、まあ良かったんですけれど。

で、その寮には、やはり私と同じような20代の女性が沢山住んでいました。同じような境遇の人だらけだったので、将来のことを考えないというか、働き方にあまり疑問を感じないで過ごしました。まあ、そこも8ヶ月で辞めるんですが。

その後は人材派遣会社に契約社員として入り、今度は派遣する側ですね、コールセンターで「面接を受けたいです」という人からの電話を受けて、面接日時を設定するという仕事に3年間就きました。

生まれ持った向き不向きがある

そういった職業遍歴を振り返って思うのは、「小学生の内に自己分析は行った方が良い」ということです。生まれ持った向き不向きって、絶対にあるんですよ。「無理してでも仕事に適応しろ」ではだめなんですよね。選べるようにしないといけないと思います。

今思うと、私は自分に合った職場を選んでいませんでした。そもそも、朝、時間通りに起きるのも苦手でしたし、職場に向かう満員電車に乗ることが、吐き気がするくらい辛くて。でも、「周りの人ができていることを何故自分はできないのか」という自責の念がありました。

そんな中でも、漠然とクリエイティブな仕事がしたいとは思っていました。子供の頃から絵を描くのが好きだったので。でも、美術系の学校を出ていなかったから、その道はないと思い込んでいました。

そういった状況で働いている最中に結婚しまして、その後子供を2人産みました。最初に妊娠してからは仕事を辞めて、子育て一本で。パートをするつもりもありませんでした。 上の子は幼稚園に通っていたんですが、やっぱり体調を崩したり「行きたくない」という時があったりするので、私が家にいないといけないと思っていたんです。

講座を受けてデザイナーへ

画像引用元:久保さんがデザインした長野県松本市の企業「林友ホーム」ウェブサイト

そんな頃にターニングポイントが訪れました。

「在宅ワーカー養成プログラム」というものを行政と民間企業が一緒になって開くという情報を得まして、「これだ!家でできる」と思ったんです。何のスキルがなくても、これだったら子育てと両立できるのではないかと。

それに、通勤そのものが苦手な自分にとっても良いと思いましたし、さらに、プログラムの内容がチラシづくりやウェブデザインだったので、クリエイティブでもあったんです。

そこで4ヶ月受講して、卒業後はウェブデザインやコーディングを手がける企業に就職することができました。

もちろん、4ヶ月の勉強だけではすぐにプロとしてやっていけるわけもないので、就職先のデザイナーさんから指導してもらいながら腕を磨いてきました。

しかも、コロナ前からずっと在宅勤務を推進している企業だったので、本当に幸運でしたね。子育てをしながら働くことができました。

そこでは5年務めさせてもらいまして、次のステップへ、ということでフリーランスのデザイナーになりました。

興味のあることをやってみる

画像引用元:久保さんが制作した長野県松本市「(公財)自然農法国際研究開発センター」パンフレット

デザイナーという仕事は、自分に向いていると思います。

デザインって毎回新鮮なんですよね。2度と同じものはない。生み出す苦しみはありますが、作業自体が辛いということはないんです。モチベーションが途切れない。

若い頃からそうなんですが、私は自分が楽しいことをして生きていきたいんです。

それで、たまたまお金が稼げたらラッキーなんですが、お金にならない好きなことも諦めたくないんですよ。それも全力でやる。

で、デザイナーになった後は、24時間の中で自分の好きなことはデザインしかなかったんですが、それだとちょっと飽きるというか、もったいない気もしてきまして。デザインも上手くいったから、また別の新しいことを始めたらそれも上手くいくかもしれないと思いました。

それで、趣味としてドラムを始めたんですが、そのおかげですごく気持ちが豊かになりました。

結果、デザインもドラムも長く続いてきています。長く続いたということは私にとっては財産なので、これからも続けていきたいですし、諦めたくないですね。

かつての私のように、「子供がいるから」とか、「惹かれるけれど経験のない仕事だから」という風に迷ってる人がいたら、興味のあることは諦めずにやりましょう、と言いたいです。

もしそれが続かなかったとしても良いんですよ。やってみて向かなかったら、スパッとやめて、また別に興味のあることをやってみれば。気付いたら「あれ、意外ともう1年もやってるな」ってなるかもしれません。

気楽に考えると良いです。周囲に流される時もあるかもしれませんが、カチッと決めないで。