株式会社ファーストロジック【全国の不動産会社を回り趣旨を説明し収益物件の掲載に努めました】

 ファーストロジック(東証スタンダード市場)。投資用不動産サイト「楽待(らくまち)」を運営している。会社四季報の業績欄の見出し【連続増配】が示すように、着実な収益動向を見せている。本社移転の影響が発現した2021年7月期こそ「2・7%増収、6・8%営業減益」も「10円配」開始。以降も「9・3%増収、25・3%営業増益、11円配」「11・6%増収、11・0%営業増益、14円配」。そして今7月期も「5・1%の増収(22億円)、3・8%の営業増益(11億6800万円)、23年8月に1:2の株式分割を実施し実質16円配」計画。今期中間期時点の投資家のサイト閲覧数(PV)は累計で前年同期比5・5%増(7100万件強)/webサイトの投資家会員数は14・3%増(38万2000人)/物件掲載数17・9%増(6万件)。

起業、事実は小説よりも奇なり

 物件掲載数首位の投資用不動産サイト「楽待(らくまち)」を運営するファーストロジックの創業の経緯を知ると「事実は小説よりも奇なり」、そんな言葉が脳裏を過ぎる。
 創業者代表の坂口直大氏は大学卒業後、システム開発企業に身を投じた。システムエンジニア(SE)を目指し残業が多い日々も業務に没頭した。そんなある日先輩から「SE35歳定年説」を聞かされた。
「IT業界は技術の移り変わりが激しく35歳を過ぎると、技術的にも体力的にもついていけなくなる」。当時囁かれていた「論」だった。坂口氏は「自分も35歳を過ぎたらホームレスになる可能性があるかもしれない。衝撃的だった」とする。時を同じくして坂口氏はもう一つの衝撃に襲われた。「肺癌」の診断を下された(実は誤診で結核。1年間の通院で快方に向かった)のである。二つの衝撃に、「どうやって残りの人生を生きていけばいいのか。生きる以上は多少なり世の役に立つ生き方はないかと思い悩んだ」と振り返っている。23歳の時である。

 通院しつつもまずは「SE35歳定年」(リストラ)に備え、安定した収入を求めなくてはならない。考え付いたのが不動産投資。家賃収入を得る道だった。時の年収は約300万円。東京中の不動産屋を歩いた。しかしどこも相手にしてはくれなかった。インターネットにも(投資用)不動産情報など見当たらない。

 が、これがファーストロジック立ち上げの背景となった。当時は「ドットコムバブル」と呼ばれ、楽天グループやサイバーエージェントなどインターネット関連企業が次々と立ち上がっていたタイミング。坂口氏は「アナログで閉鎖的な不動産業界をインターネットで変えればビジネスチャンスになるのではないか」と「起業」の二文字が頭に浮かんだという。厳父は銀行員。相談すると「融資先の経営者には、経営がうまくいかずに自殺に追い込まれた人もいる」と聞かされ、考え込んでしまったこともある。そんな最中に出会ったのが「死の床で人生を振り返ったとき、後悔することが最も少なくなるように生きようと決めた」という、Amazonの元CEO:ジェフ・ベゾズの言葉だった。「起業を諦めたら後悔する」と腹を括った坂口氏はファーストロジックを設立した。2005年8月のことである。自宅アパートで、たった一人での起業だった。

 ビジネスの柱である「楽待」サイトの設立、成功までの紆余曲折。そして坂口氏の今後の方針などについては、以下に記す。

楽待サイトの成功は、差別化にあり!


 ファーストロジックでは成功の理由を、「物件情報が最大という点が最大のポイントと認識している。またポータルサイトとしては稀有な“楽待(新聞)”といったwebメディアを運営して独自取材の記事を数多くアップし不動産投資のメリットだけでなくデメリットや失敗談を伝えている点も、信用力として寄与していると捉えている」とする。

 実は坂口氏はポータルサイト:楽待の開設(2006年3月)に当たり、差別化戦略を執っている。創業時には既に、不動産ポータルサイトとして「スーモ」「アットホーム」が存在していた。対して楽待は一口で言えば「具体的な物件情報は一切なし」のサイトとして立ち上がった。
 具体的には投資家はまずサイトに、『自分の属性や希望投資物件の条件』を入力する。個人名・連絡先は伏せられた形で、だ。それを閲覧した不動産会社は『これなら』と思う物件を提案する。投資家は興味を持てば『問い合わせ』、なければ『お断り』と回答する。問い合わせの場合のみ、不動産会社に投資家の連絡先が表示される。後の交渉にファーストロジックは一切、関与しない。加盟不動産会社の広告が主な収入源。

 が差別化戦略も、一朝一夕で効果を現したわけではない。 坂口氏自身「物件掲載数の多寡が最大の要因。全国の不動産会社を回り趣旨を説明し収益物件の掲載に努めました」と、「地道さ」を語った。結果「楽待サイトを通じて出会った投資家に物件が売れた」という朗報に接したのは、サイト開設から1年と2か月後だった。「社員全員で大喜びをした。心底嬉しかった」という。

 坂口氏は、成長の足場固めを緩めない。加盟不動産会社の拡幅を進める一方で投資家開拓にも積極的な施策を執っている。楽待公式Y0UTUBEチャンネル(登録会員数:24年5月14日現在で60万人超)なども、その一例。不動産投資をより多くの人に知ってもらう為の施策だ。