株式会社鎌倉新書【人材の育成・活用には「誇れるに値する研修マニュアル」が、不可欠】

鎌倉新書(東証プライム市場上場)。葬儀・仏壇・墓などのポータルサイトを運営している。

着実な増収増益

例えば葬儀の相談がサイトに寄せられる。対してサイトのスタッフは相談者の身近なエリアはどこかに始まり、微に入り細にいった条件を聞き出す。その上で、「適当」と判断した葬儀社を紹介する。相談者と紹介された葬儀社と遣り取りを経て「契約成立」となった時点で、同社には紹介手数料が葬儀社から支払われて始めてビジネスとして成り立つ。ちなみにポータルサイト上の(葬儀社)広告も収入となる。その他のポータルサイトでの収入体系も同様。そしていま、仲介をする領域が拡大している。例えば、相続税に関する相談などは顕著な一例。この場合も微細な情報を把握・認識して、提携関係にある行政書士や税理士を紹介・対応を委ねる。

主要ポータルサイトで相談者との仲介の任を担っているのが、コールセンターのスタッフ達。彼らの対応の出来不出来が、鎌倉新書の収益に大きく影響する。でこの間の収益動向はどうかというと、2021年こそコロナ渦の影響で「0・8%減収、66・3%営業減益」を余儀なくされた。が翌期以降は「18・1%増収、101・24%営業増益」「30・8%増収、28・9%営業増益」「17・1%増収、18・9%営業増益」。「葬儀の在り様の変化(家族葬など小型化)」が指摘されるなか盛り返し、着実な増収増益の道を歩んでいる。そして今25年1月期も「23・7%増収(72億5000万円)、34・8%営業増益(11億円)」計画。

誇れるに値する研修マニュアル

人事部門管掌の重田正明氏は、「人材力が果たす役割は大きい」とした。その通りであろう。ではその中軸となるコールセンターの面々の力は、どう構築され磨かれているのか。コールセンターの育成責任者である久保田衛氏の話を聞いた。具体的に、こう理解した。

「専門職としての採用はしていない。あくまで入り口は一般採用。人事面接時に業務説明で当社のコールセンターの職務を知り、興味を覚える人かどうかが、重要なポイントになる。関心を寄せる人材こそが育成に最適と認識している」。

「コールセンター、または各サービスの実務経験に、軸足はおいていない。従い、経験者採用という方法は執っていない」。

「その業務内容に興味を抱いた人材に、長年の歴史の中で培ってきたノウハウに基づいたマニュアルによる専門研修を1か月から2か月半実施し現場に送り込む。研修に際して最も力を入れているのは、とことん相談相手の話に聞く耳を持つという点。でなくては的確な紹介は出来ないからだ」。

 そこまで聞いて。素朴な疑問を持った。鎌倉新書のポータルサイトが対象とするエリアは、北は北海道から南は沖縄の全国区。久保田氏は、こう応えた。

「業務の委託契約を結んでいる企業がある。そこには外部スタッフが、当社のコールセンターのスタッフとして活動している。社員スタッフと外部スタッフの間に、業務上の差異は全くない。それは外部スタッフもまた、当社のマニュアルで徹底研修を受けた面々だからだ。また鎌倉新書のスタッフも勤務場所に多様性が増しており、自宅を拠点に仕事にあたっている者も少なくない。要は研修に当たってのマニュアルの質だと自負している」。

 人材の育成・活用には「誇れるに値する研修マニュアル」が、不可欠ということである。そんな研修を経て現場に立ったスタッフが、日々の体験でその才覚を拡幅していく。「人を育て・活かす」ことは、決して一朝一夕には実現しないと言えよう。段階を踏むことが不可欠といえる。そしてそれが現実のものとなった時、事業自体そのものの拡充も可能になってくる。

ノウハウから生まれる新たなビジネス

 鎌倉新書の現状に、それは読み取ることが出来る。積み上げたノウハウが、例えばこんなビジネスに繋がってもいる。

 終活の一環として、「介護」がある。入居施設といっても、要件に応じてその種類は多種多様。例えば要支援・介護度に応じ施設は選別される。必要な資金の本人・家族の負担度によっても、事情は異なってくる。その当たりを詳細に把握する(聞き出す)ことで、適切な施設の紹介が初めて可能になる。言葉を選ばずに言えば、そうでなくては鎌倉新書の実入りにはならない。

 同社が培ったノウハウを活かし、子会社でこんな事業が展開されている事実も知った。葬儀の多様化・簡素化という時代の流れに沿う形でニーズが高まっているひとつに、「海洋散骨」がある。東京湾を含む全国80カ所以上で対応している。ハワイでの実績もある。昨年度の年間実績は862件。「墓の引っ越し」「墓じまい」などもサポートしている。また、こんな葬儀も行われたという。故人は、元少年野球の監督。通夜・葬儀に多くの縁の人々が集まれない状況下。生み出されたのが、ユニフォーム姿の故人の写真に紙ボールを投げるという「お別れ会」。

 ポータルサイトで得た知見が活かされた結果だ。それだけになおさら、ベースとなるスタッフ達の感性が重要になる。その為にはコールセンターのプロが育成されなくてはならない。通り一遍の人材の育て方・活かし方のテキスト的な研修では、成し得ない。歴史の中ではぐくんできた要素をふんだんに盛り込んだ、マニュアルを生み出すことが人材を育て・生み出す礎になる。