岐阜大学_前澤重禮教授に訊く:「スゴ腕リーダー育成講座」で得られる「人の心」を動かすヒント

岐阜大学 社会システム経営学環が主催する「スゴ腕リーダー育成講座」。受講者の気づきを誘導し、職場の課題解決に直結する具体的なアクションプランを提示するという、実際のビジネス現場でリーダーシップを発揮したいと考えるすべての社会人に広く求められる講座です。

さらに本講座では社会人だけでなく、学生も交えて1つのテーマについてのディスカッションができるという、貴重な機会も提供していました。

こうした取り組みの意図や効果について、講座を担当されている前澤重禮教授にお話をうかがいました。

前澤重禮 先生
岐阜大学 社会システム学環 特任教授および名誉教授


大阪府生まれ。大阪大学大学院理学研究科博士課程満了、理学博士(1984)。
徳島大学医学部助手を経て、岐阜大学応用生物科学部助教授・教授。
社会システム経営学環特任教授および名誉教授(2021~)。

【専門】組織経営における人材育成・開発。食品流通の仕組みにも詳しい。
組織リーダー論、リーダーシップ入門、サプライチェーンマネージメント論を担当。
【社会活動】岐阜県SDGs推進会議委員、地産地消推進会議委員、
岐阜県卸売市場審議会元会長、岐阜市中央卸売市場開設運営委員会元会長等

まず「人」の気持ち。現場での経験が生んだ「スゴ腕リーダー育成講座」

――先生のご専門をお聞かせいただけますか。

今は岐阜大学 社会システム経営学環で、リーダーシップ論や組織マネジメントを専門にしています。

社会システム経営学環ができてから3年半経ちますが、私は初期から参加しています。その前は、岐阜大学の応用生物科学部で食品の流通を専門にしていました。

時系列で言うと、元々は流通学を専門にしていて、それをもとに今の社会システム経営学環に移り、組織リーダー論やリーダーシップなどの「人を動かす」ところに集中して色々と教育しているというわけです。

――「スゴ腕リーダー育成講座」を開設された背景や目的をお聞かせ願えますか。

今お話しした私の略歴とも関係あるのですが、応用生物科学部で食品流通をやっていた時のエピソードがつながってくるので、その話をいたします。

応用生物科学部にいた時は食品の流通、特に野菜や果物、生鮮野菜の鮮度をいかにキープさせるかという技術の研究をしていました。温度を低くするとか、冷蔵庫をこう使おうとか、あるいはほうれん草等のパッケージに使うフィルムはどんなものを使えばいいのか等ですね。そういった、鮮度保持をするための技術を研究していたんです。その時は、スーパーマーケットの方に「こういうフィルムを使った方が良いですよ」だとか、「こういう冷蔵庫にこういう温度で入れるのが一番いいですよ」というようなことをお客様に伝えたら、非常に感謝されるよといった話をしていたんです。

ところがある時、スーパーで30代の若い店員さんとお話した際のことです。「ちょっと高いかもしれないけど、ほうれん草は良いフィルムに入れると鮮度が保持されて、長持ちしますよ」とお伝えしたら、「いや、先生何を言っとるんや」と。「こんなフィルムに入れるから、店員が売ろうとしないんや」と言われてしまいました。つまり、裸のまますぐ鮮度が落ちてしまう状況だからこそ「早く売り切らないといけない」「売ってしまわなければ損をするぞ」と思うから、売ろうとするというわけですね。そういうことが大事なんだと聞いて、最初は「えっ」と思いましたが、「確かにそうだよね」と納得しました。

今の話を深掘りすると、結局、組織や会社は人が構成しているものなので、やっぱり人の感情がメインなんです。技術とか理論とか原理とか、そんなものではなくて、現場の担当者の「気持ち」や「人」が大切だよね、と。そこに気が付いてから、自分がずっとやってきた技術の分析や開発といったものに、ちょっと疑問を持ったのがきっかけです。

応用生物科学部から社会システム経営学環に移った時に、私のこの経験を活かしたいなと思いました。すなわち、「技術」を教えるのではなくて、人の気持ちというものをきちんと理解した上で「皆さんの心の中や脳の中はこうなっている。だから、こうした方が良いんじゃないですか?」という風に話を聞いていただくのが一番の基本だと思ったんです。それがあって初めて、世の中の技術や仕組みといったものが上手く機能するのではないか、と思いました。これが「スゴ腕リーダー育成講座」で人材を育成しようと思った経緯です。

――人の気持ちが動いてこそ、技術や研究も役に立つと。

一番難しいところでもありますが、感情を揺さぶられることで人は動くので、技術や仕組みを応用する際にも、まずは人の気持ちを動かすことが先決なんです。例えば、子供にいきなり「勉強しよう」と言ったって、すぐに勉強するわけはないですよね。ですが、子供の気持ちが動くようなことを話すと、自ら「ちょっと勉強しようかな」という風に思って勉強に手を付け始めるわけです。

社会人の方で「スゴ腕リーダー育成講座」を聞かれる方っていうのは、結構意識が高い方たちなんです。そういう方が会社に戻った際に、自分の気持ちが動いたことを、周りの社員たちにお話しいただけるのであれば、私も社会に貢献できたと言えるのかな、と思っています。

リーダーの変化が部下の行動を変えるきっかけに

――受講生の方は、役職が上の方が多いのですか?

皆さんほぼ管理職の方ですね。部長さんとか、役員クラスの方もおられます。あるいは、小さな会社の社長さんも来られますね。皆さん「会社の目的とか社会貢献とか言うけれど、それだけを刷り込もうとしてもだめだよね」と仰います。また、講座を通じて「社員の気持ちが大切だと思わない限り、いくら言っても無理」ということに気付かれて、「社員の感情や気持ちを動かすような研修を行うとか、そういうきっかけを与えなければいけないな」等とも言ってもらっています。

――「職場でこういう影響が出ている」等、講座を受けられた方からのフィードバックはございますか。

初めに私が「スゴ腕リーダー育成講座」の効果を感じたのは、講座をお聴きになった方が、会社で教える側に回っているということですね。聴くだけなら簡単ですけど、教えようとするとたくさん勉強しなくてはいけません。当然、社員からの質問に対する答えも前もって準備しておかなければいけないですし。
そういった、これまでやってこなかったような新しい行動を起こして、皆さん「こんなことは当たり前だけどできていなかったよね」ということにお気付きになっているようです。

それによってすぐにポンと業績が上がることは無いと思いますが、行動を起こしたことで部下の方の行動も変わってきているので、これが将来の利益につながるのかなと思います。私の講座をお聴きになった方は、実際に「行動が変わった」ということに対して「聴いて良かった」という風に仰っていますね。

――実際に部下の方の行動が変わると、上司の方も気分が良いですよね。

まさしくそこなんですよ。お互いに気分が良くなると、業務は回ります。理論ではないんです。そうしたスイッチを入れられるような講座にしているつもりです。

「就活」の場以外で学生と社会人が交流を持つことによる効果

――「with学生」と付く講座は、学生さんも一緒に受けられるんですね。

そうなんです。社会人の方向けの「昔、大学生の頃に勉強しなかった分を取り戻すぞ」といった、リスキリングや学び直しのための講座はよくありますよね。一方、私は4月から7月くらいまで、通常学生だけ受講の「組織リーダー論」という授業に社会人を入れていました。これによって学生も、リアルな社会人の方と本音で話す機会ができるんです。

参加していた学生は三年生なんですが、皆さん「就活へ行くと、人事の方と形式的な対話しかできない」と言っていました。企業側にしても、「学生と会う」となったら「うちに採用していいかどうか」という、評価する視点で会うことが普通だと思うんですけど、「スゴ腕リーダー育成講座」の「with学生」では異なります。そうではなくて、「一つのテーマについて本音で喋りましょう」という機会を設けているんです。学生も、その方の会社の就職試験を受けるわけではないので、社会人の方に「実際どうなんですか?」と、好きなことを聞くことができます。

また、授業に参加されている社会人の方は人事担当の方も多いんですが、そちらも「学生さんの本音を聞けて役に立つ」と仰っていました。授業では毎回一つのテーマを決めて、私が最初に1時間くらいプレゼンテーションをした後で皆さんにディスカッションしていただいているんですけど、皆さん本音で語り合えているようです。

――就職活動の際にも、お互いにすごく効果がありそうです。

間違いなくありますね。学生もよく「これで面接試験に行く時に何を質問すればいいか分かった」と言っています。本屋さんで売っている、いわゆる『面接のテクニック100選』等の本には載ってない感覚的なものといいますか、息遣いが分かるような距離で接する社会人の方からの声かけとか、そういうものに学生の心が動いているのだと思います。学生も「授業より、社会人の方と話してる方がええわ」と言っていますが、それが一番の効果なんですよ。

――面接する側も、本来聞かなくちゃいけないところを聞けるようになるし、学生さんもきっと、どれだけ求められているかという部分を感じられるようになると思います。

皆さん「リアルな話が聞けてよかった」と仰います。「with学生」は大体2週間に一回のペースでやってきたんですけど、参加される社会人の方はだんだん固定されていくんです。ですからグループディスカッションを行う際、社会人と学生の組み合わせは毎回、できるだけ色んな社会人、色んな学生と話せるように工夫をしていました。すると社会人の方から「あ、こんな学生さんもいるんですね」とか、「なんか変わった学生さんがいるな」といったことも言ってもらえているので、工夫して良かったと思っています。

――変わった人材というのは、会社にとって必要だと言われていますよね。

はい、そうですね。変わった人材というのは、面接だけではなかなか見抜けません。ですが「スゴ腕リーダー育成講座 with学生」に参加された社会人の方たちは、講座の中で学生たちと話した経験から「変わった人材を取るにはどういう質問をすればいいのか」という点に既にお気付きなので、実際に仕事に役立てているようです。

――学生さんにとっても、その仕事が合っているかどうか、これから続けていって良いかどうかを早い段階で判別できるようになりそうです。

そうなんですよ。今の学生は終身雇用という意識がほぼありません。最初にどこかへ就職して、スキルを身に着けたら「次はどこへ行こうかな」と考えるという、したたかな部分もあるんです。そういう学生達がキャリアを考える上でも少し貢献できるのかな、思っています。

経営学に基づいた上で人間の感情にフォーカスする

――「スゴ腕リーダー育成講座」が他のリーダーシップ系の講座と異なっている点はありますか?

異なる点は二つあります。

一つ目は、やはり私は社会システム経営学環の教員として講座を持っておりますので、経営学に基づいた研修になっている点です。経営学はいわゆる「組織論」と「行動論」と「戦略論」から成ります。私はこれらを経営学の三本柱と位置付けていて、それぞれの柱に紐づいたような中身を設定しています。例えば「今から聴いていただく内容は、経営学の組織論に関係しています」「次回は行動論について話します。その次は戦略論について話します」という風に。

企業の方が「スゴ腕リーダー育成講座」を聴きに来られる理由は、「自社に戻って人材をうまく使いたい」とか、「自社のリソースをうまく使いたいと思っているけれど、どうしたら良いかわからない、きっかけが欲しい」といった悩みがあると思うんです。

前提として、人の心や現場が大事ではあるんですけれど、マネジメントする側は「経営学」という確立した学問体系に則って、それを現場に活用していこうということですね。

授業を通じて、経営学の重要性や組織論、行動論、そして戦略論について覚えていただくことで、困った時にご自身で「もうちょっと勉強してみようかな」と思えるきっかけを与えているというのが、他の講座と違うところの一点目だと思っています。

もう一点は、最初にお話ししたこととも関係してくるんですが、重要なのは経営学の知識だけではなく、人間の感情なんです。いわゆる心理学や脳科学、認知科学といった分野ですね。「脳みそや心と関連付けた指導法はこうですよ」「なかなか言うことを聞かない若い人、あるいは、思い通りモチベーションが上がらない部下はこういう精神状態なんです」ということが分かれば、「じゃあ今度は相手に対してこういう風にしてみようかな」と思えますよね。そうしたきっかけになるように、講座の中では心理学や脳科学、認知科学の言葉も使って解説しています。

例えば「なぜZ世代と言われる若いやつは動かないんだ」という疑問に対し、心理学的なアプローチをすると、「確かにそうだよね」と腹落ちするんです。経営学の論理だけではなかなか頭の中に入っていかないので、こういった心理学的な話もしているというところが二つ目の特徴だと思っています。

――以前は、若者は「宇宙人」とか「新人類」とか言われて、交わらないみたいに言われていましたよね。

本当にその通りなんですよ。先ほど申しましたように「スゴ腕リーダー育成講座」に参加していただいてる方は皆さん意識が高くて、会社の人事担当であったり、研究開発をやっておられたりする方が多いので「皆さんバイアスがかかってますよ」「偏った考え方にはまり込んでますよ」と声掛けをしたりします。

皆さんずっとビジネスをやってきて成功されているんで、つい武勇伝が出てしまうんですよ。武勇伝が出るということは、経験でしか部下を指導できないということです。経験に基づいてしまうと、今の若い方は反発します。先ほど言った経営学とか心理学とかといったような、理論に基づいたアプローチをすることが大事なんです。

こういうことをお話しすると、皆さん「納得」と仰います。「確かに俺は武勇伝言っとるわな」と。「私も含めてもう皆さん、いわゆる『老害』『武勇伝』真っ只中ですから」という話をして、ちょっと笑いも入れながら「確かにそうだね」と思っていただけるよう、気付きを誘導しています。

「解釈」は自由にコントロールできる

――経営学において重要なポイントは何なのでしょうか。

経営学や心理学の1番のポイントは「人間には頭がある」ということです。インプットがあって、アウトプットがある。インプットというのは、目で「見る」といったような、色んな情報です。一方、アウトプットというのは声掛けと行動なんです。

ここからが重要なポイントなんですが、インプットというのは誰が見ても1つの情報で、「事実」なんです。あの人がこんなことを言ったとか、こんなことが起こったとか、あるいは売り上げが下がったとか、逆に105%アップしたとか。これはインプットであり情報であって、誰が見ても同じ「事実」です。

一方、この「事実」を「解釈」するのが脳です。同じ「事実」に対して「5%アップしただけなのか」と思うのか、「5%もアップしたのか」と思うのか、という違いです。よく言われる、コップに水が「半分『しか』ない」のか「半分『も』ある」か、という話ですね。皆さん、このことは誰もがよく知っているんだけど、自分に当てはめることができないんですよ。

だから、上司に何かワーッと言われると「なんだあの上司は。文句ばかり言いやがって」という風に「解釈」してしまう。同じように言われたとしても、「自分のダメなところを客観的に言ってくれている。ありがとう」という風に解釈することもできるわけです。上司が注意してくるということは「事実」で一つですが、「解釈」は色々あるわけです。

「事実」と「解釈」の関係をよく認識することが、経営学や心理学を学ぶ上での1番のポイントだと思っています。情報や事実は一つで、決まっている。それをどう「解釈」するかで次の行動が変わるんです。

反発するのも感謝するのも、その方自身が頭で「解釈」しているだけの問題なんです。自分の解釈の仕方は自身で納得できるようにコントロールできる、という風に考えています。

――例えば、Z世代の部下が思った通りに動いてくれない状況を「面倒だ」と思うのか「これは宿題だ」と思うのかの違いですね。

仰る通り、今Z世代と一緒にいて、なかなか思うようにできないというのは「事実」です。ですが、例えば5年後や10年後に、その上司が「あの時、若いZ世代と一緒にいたことが良かったよね」という風に思うためには、今、どう「解釈」すればいいのだろう、ということです。

若い人の行動を変えることはできませんが、解釈の仕方は自分で自由にコントロールできるので、解釈の柔軟性をトレーニングすると1番いいのかなと思います。

――そうすると、5年後の結果も変わってきますよね。

変わってきます。若い人に対して「こんなやつがいたらダメじゃん、もっと違う人がいいな」と思ったとしても、理想の未来を考えた際に「逆にそれがいいかもしれないな」という風に「解釈」すると、若い人への声掛けも変わってきます。

それが5年後、自分が描いている未来に近づくためのリアルな対応なんです。将来と現実を自分の中で結びつける感覚といいますか。解釈に相手は関係ないので、コントロールできますからね。

――会社での話だけでなく、自分の人生にも影響しそうです。

そうなんですよ。自分でも変化を感じられるので、1番効果があるんですよ。人に教えられるんじゃない、自分で感じるっていうところがいいのかなという気がしています。

――すごく大きなきっかけがもらえる講座ですね。

そう、きっかけなんですよね。何か知識を「学んでもらう」というのではなくて「気付きの誘導」をしています。

「スゴ腕リーダー育成講座」で私がパワーポイントの資料を表示させると、みんなそれをメモするんですね。メモをとることは良いのですが、メモって大体「分かった気がする」で終わってしまう。だから「メモるんじゃなくて、今『これをやらないかんな』と思ったことを書いてください」と言うんです。

皆さんが今「あ、今度A君にはこんな言葉をかけよう」とか「部長にはこういう風に言ってみよう」とか、 私の講座を聴いてる時にパッと思ったことをメモってください、と。これを実行するだけで、今日来られた成果が出ていますよ、ということをいつも言っています。

――具体例はありますか?

実際に、「部下に対してこういう言葉をかけたら自分も落ち着いたし、相手も聞く耳を持ってくれた」といったことを聞きますね。

――即効性もありますね。

ありますね。で、私の方からも「他に若い世代の方に対して、リアルに困っていることを教えてください」と聞くんです。皆さん会社で活躍されている40代以上の方が多いので、「20代の部下と接しているとどんなことがあるんですか?」といった話を振ると、管理職の方はどんどん喋ってくれます。

例えばこの前聞いたのは、若い部下を車に乗せて取引先まで連れて行ったけれど、運転中、部下はずっとスマホを見ていたという話ですね。部下としては横に座っているだけなので、別にスマホを見ても悪くはないと思っているんだけど、上司からすると「今から取引先へ行くという時に、なんでスマホを見ているんだ」という気持ちになる。

これが先ほど言う「事実」と「解釈」です。「上司が運転する車の中でスマホを見ている若い部下」という事実を見た時に、その40代の管理職がどう解釈するかという。「なんだこいつは」という風に解釈するのか、「そうか、こんなにスマホを見ているのは、自分の声かけが足りないからだな。もう少し運転しながら声かけをしたらいいよね」と解釈するかの違いですね。自分の解釈さえ変えれば相手も変わるし、自分も成長するんです。

初めのうち、受講者と私はそんなに親しくないので、色々と効果等を聞いても、表向きの対応しかしてくれないんです。ですが、その時にもう一度私が突っ込んだ話をすると、だんだん本音が出てきて、私との距離もだんだん近づいてくるんです。そうなると、向こうの方の本音も聞けるようになってきます。私も「講座ではこういうことを言っているんですけど、本当はここまで言いたいんです」なんてことを、個人的に喋れるようになります。そういうところにも、この講座の効果が出ているのかもしれないですね。

理論を「リアル現場」に落とし込む

――今後目指される、この講座のビジョン等はございますか。

私の考え方が正しいか間違っているかは分かりませんが、もし受講生の方がこの考え方に感動されたとしたら、もっと他の人に伝えていただきたいです。あるいは、また来年もやる場合には他の方にも参加を促して欲しいですね。

もっとこの考え方を広めていくためにも、どういう情報を参加者に伝えればいいのかということを、より突き詰めて考えていきたいなと思っています。

――「スゴ腕リーダー育成講座」は会社にとって救世主のような講座だと思います。

そう思っていただけたらありがたいです。実際に「長期で研修に来てください」と言われることもあります。実際に行ってみると、色んな会社、色んな職種がありますよね。例えば、自動車部品を作っている工場の従業員の研修と、銀行員の支店長の研修とではどうしても違ってきます。そういった時に、私がいつも気を付けていて、これからも気を付けていこうと思っていることがあります。

私の話は理論なので、どちらかと言えば抽象的です。この話を、例えば工場現場に落とし込んだらどうなるのか。毎日朝8時半に来て、着替えて、帽子をかぶって部品を組み立てている方にどう役立つのか、というところまでかみ砕いて話をするようにしています。

銀行の支店長さんの研修だったら、利益を出すために支店長さんが自ら動くだけでなく部下を動かさなければいけない。そういった立場の場合、「今お話ししたことはこういう風に使えますよ」といったように、経営学の三本柱や脳科学をいかに「リアルな現場」に落とし込むかということを大切にしています。また、そういうところをもっともっと深めていきたいなという風にも思っています。

「いや先生、確かにそうだけども、うちの現場でどうやって使ったらいいかわからん」という風に思われないよう、苦心しています。

――最後に質問です。今、前澤先生は幸せですか?

幸せです。これはウェルビーイングということでよく話していることなのですが、皆幸せになりたいです。私もなりたいです。幸せを追求していくとエンドレスなんですよ。「今こういう状態になったら幸せになるよね」と思っても、いざその状態になると、また上を狙うんですね。それだと永遠に幸せ感が感じられません。ですのでもう今、超満足しています。私は今、幸せの真っ只中です。