akippa株式会社【とどまることのない駐車場シェアリングサービス市場開拓戦略】

akippaは花火大会に不可欠な駐車スペース確保の、強い裏方でもある

 今夏も夏の風物詩:花火大会が全国随所で予定されている。長野県諏訪市では名高い、「諏訪湖祭湖上花火大会」。茨城県土浦市の、「土浦全国花火競技大会」。愛知県豊田市では、豊田おいでんまつりのフィナーレを飾る東海地区最大の花火大会。高知県四万十市で行われる花火大会は、四万十川の水面に花火が映る優美さで知られる・・・etc。そんな花火大会を目に出来る羨ましい方々には是非、裏方役:akippa(以下、アキッパ)の名を思い出してほしい。花火大会に車の混雑はつきもの。例えば諏訪市の場合は市の施設や学校の校庭などが駐車場に充てられる(約2700台分:2023年実績)が、到底間に合わない。この祭事に向け約4000台分のスペースを確保しているのが、今回の主人公:アキッパでもある。

 アキッパは一口で言うと「駐車場の空きスペースを有する」オーナーと、「(一時的に)駐車したい」ドライバーをつなぐサービス事業を展開している。

akippa(アキッパ)の仕組み

アキッパ誕生でみせつけた金谷流起業家「術」

代表取締役社長 CEO 金谷 元気さん

 アキッパの前身は2009年2月に現代表の金谷元気氏が住む、ワンルームマンションで生まれた。営業代理業で始まり求人広告・出版業に手を拡げていった。が共同創業者の松井建吾氏が金谷氏に真剣なまなざしで聞いた「この会社のミッションは何なのですか」という一言に、金谷氏は「ハッ」とし自問自答を繰り返した。そんな折も折だった。自宅が停電に見舞われた。「電気ってすごい。電気の様になくてならないものをつくりたい」と確信し、それをミッションとして掲げた。

 ではそれがどういう経緯で、現業に繋がったのか。そこに私は、金谷氏の起業家術を覚える。全社員に、「生活の中で困った体験を、書き出して欲しい」と要請した。そしてそんな中の一つに「駐車場は現地に行ってはじめて満車だとわかるので困る」があった。

 金谷氏は調べた。当時「車の台数8000万台に対し、時間貸し駐車台数は470万台」「東京・大阪だけで毎秒9万台以上の、路上駐車が発生している。対して車の台数に置き換えると3000万台以上の空きスペースがある」と知った。結果がアキッパの事業開始というわけだが・・・読者諸氏も振り返って欲しい。「会社のミッションは」と、「現地で駐車場が見つからず」としたのはいずれも部下。起業家には往々にして「トップダウン」に拘る面々が少なくない。それが、えてして失敗の要因にもなりうる。

 金谷氏には「ボトムアップも悪くはないですよ」と、さらりかわされてしまった。

アキッパの武器はとどまることのない市場開拓戦略

 コロナ禍で人流が途絶えてしまった2020年には月次で、数千億円の赤字を余儀なくされた。がそれでも「駐車場の開拓は積極的に続けた」(金谷氏)。それが前期には「売上高26億円、通期黒字」状態に転じている。

 サービス開始時の2014年4月には駐車が可能な拠点数は、合わせて約700カ所だった。駐車スペースがある月極駐車場・時間貸駐車場・個人宅の倉庫/空き地・商業施設の駐車場の総計だ。それが現在では「アクティブ件数」という括りで、4万件以上。稼働率の高い駐車場スペースと捉えればよい。一方の登録会員数は当初の3000人から累計390万人に拡大している(いずれも今年6月時点)。

 その成長ぶりから、どことは言わないが成長ビジネスに敏感な大手IT企業も出現した。がいまは完全撤退状態。「ライバルは」という問いかけに金谷氏は「駐車場を運営する大手企業でしょうか」としたが、その口調には「我が道を行く。後塵は決して・・・」というニュアンスが漂っていた。

 冒頭に記した「花火大会」をビジネスの機会とするように、アキッパは興味深い事業戦略を当初から執っている。例えばSOMPOホールディングスとの提携。損保ジャパンの保険の営業は代理店が担う。代理店の顧客の中に駐車場の空きがあれば貸し出しを提案する。現在1000社を超える代理店が、契約を結んでいる。また鉄道会社との提携の歴史も古い。JR西日本、西鉄などもそんな1社。鉄道会社では勝ち残りをかけた沿線の活用が活発化している。西鉄の場合は管理する沿線の高齢者向け住宅の駐車場を、貸し出しの対象としアキッパとジョイントしている。こうした歩みはいまも継続している。金谷氏は「最近ではプロ野球の楽天や、20近くのプロサッカークラブと提携している」とした。

着々と進む、先々を見据えた準備

 アキッパの活用法を要約すると、こんな具合。●月■日(休日)に家族と一緒に某観光地を訪れたい。そのために近場の駐車場をam10時からpm4時くらいまで確保したいといった場合・・・

*アプリが導入されたモバイルやwebサイトで、予約したい駐車場を選択。日時を指定すると利用料金が表示される。15分単位・1日単位からの予約が可能。周辺のコインパーキング相場や該当日の需給バランスなどを考慮し、価格の決定はアキッパが決めるかオーナーご自身で決定するか選べる。

*支払いは事前決済。予約時にクレジットカードかキャリア決済かPayPay。

 機に応じ、詳細は「便利さ」を前提に細部にわたった見直し・改善が施されている。

 今回の取材で、先々を見据えた展開が始まっていることも知った。

 私は免許証返納組。「▲▲駅までは電車を利用し、その先は車で・・・」といった旅行プランを立てようとする時などは、不便さを感じる。「早く、自動運転車が走る時代が来ないか」と思う。「自動運転車でもレベル1~3は免許証が必要。4~5では不要となる予定」とされているからだ。

 アキッパではいまオーナーの同意を前提に、EV充電器の設営を進めている。その先には「自動運転車のカーシェア」を視野に入れていると知ったからだ。まさに「先を見据えた施策」を打っていると言える。